ヒノモト

熊は、いない/ノー・ベアーズのヒノモトのレビュー・感想・評価

3.8
『これは映画ではない』『 ある女優の不在』などのジャファル・パナヒ監督最新作。

監督自身が出演するセミドキュメンタリースタイルでイランという国への批判を繰り返し、自国では上映禁止、今作撮影後に逮捕されているという事実を背負った上で観ると、物語としての面白みは上乗せされるのですが、個人的な感覚で言えば、パナヒ監督を主演に据えるには、他の俳優たちに対して明らかに演技力不足で、監督自身の存在感や苦悩よりもドラマとして魅せたいのであれば、代役を立てるなど監督業に徹したほうがよいように感じました。

『これは映画ではない』というドキュメンタリー作品のインパクトが強すぎて、監督のメッセージとしては、これ以上の作品はないと思うので、特に今作のようにドラマ色が強いならばなおさら、俳優の演技力を信じるべきだと思いました。

内容としては、リモートで偽造パスポートで国外逃亡しようとする男女のドキュメンタリーを撮影するエピソードと監督自身が滞在する村で起きるしきたりに縛られた男女の顛末が呼応するお話で、正直監督自身はあまり能動的な行動はしないし、傍観者的な視点とも言えるので、あまり必然性を感じなかったですが、「熊」は何を意味するのかとか、内部と外部の見え方、考え方の差が運命を左右すること自体の展開の面白さはよかった分、配役の考慮は必要かと感じます。
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