KnightsofOdessa

蟻の王のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

蟻の王(2022年製作の映画)
2.5
[] 50点

2022年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。ジャンニ・アメリオ長編最新作。1960年代、ホモフォビアの蔓延するイタリアで、教え子の青年エットレと恋に落ち、教唆罪で有罪になった詩人で劇作家、元パルチザンで共産主義者のアルド・ブライバンティの物語にインスパイアされた物語。大きく二部構成になっており、前半は1959年に故郷でエットレに出会ってから裁判が始まる手前までの経緯をアルド目線で、後半ではその裁判の顛末を共産党新聞の記者の目線で追っている。この裁判では教唆罪、つまりエットレへの洗脳とかグルーミングの有無が論点となったわけだが、前半部分を観る限り結構グレーで困惑する。その上、キャラに全く深みがないので、アメリオ的な詩的世界構築のために機械的に創造されたようにしか感じられなかった。ただ、この全く薄ぼんやりした恋愛物語と過去の悲劇を艶やかに蘇らす試みの中に颯爽と登場する新聞記者エンニオだけは非常に興味深い。コイツを主人公にして裁判の映画にすれば良かったのにと思うほど、ニヒルで、それでいて情熱的で、主人公然としている。前半はずっとドヤ顔、後半はずっと呆然&泣き顔というキャラ薄すぎなアルドとは大違い。あと、アルドが蟻学者ということで、"蟻は利他主義的で、人間は利己主義的"みたいなテーマもあったけど、無理矢理絡めなくても良かったのでは。そういうことしてるから散漫な映画になるんだよ。
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