HicK

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!のHicKのレビュー・感想・評価

3.9
【捉え直したTMNT】

【社会の除け者】
タートルズと養父スプリンター、高校生のエイプリル、そして敵対するミュータントたちは全員が「除け者同士」という繋がり。面白い。イジメ、差別や偏見、共存か復讐か。間違った行いをする少数を見て、グループ全体を非難するのか。そんなテーマ性で言えば「X-MEN」に近い世界観だった。特にその"除け者同士の繋がり"が活きてくる後半がパワフル。

【好きなシーン】
・スプリンターとスーパーフライの関係性を表すシーンが好きだった。「ザ・バットマン」を彷彿とさせる合わせ鏡の関係性。
・やっぱり後半の展開は鉄板な流れで気持ちいい。

【ただ】
テーマ性に合う王道展開の熱さがある一方で、"既視感"に近いものも感じた。もう少し尖ったパンチがあっても良かったかな。コメディーももう少し減らしてくれても良かった。

【ヴィジュアル】
絵の具で塗ったような色彩の上から、更に色鉛筆やペンで粗塗りしたようなデザイン。子供の落書きにも見える。今回の"子供なタートルズ"と重ねたのかな?。全体的な世界観はコミックをオマージュした「スパイダーバース」とも違う。そこからインスピレーションを得た作品には違いないけど。不思議なヴィジュアルデザインだった。

【ナウな演出】
タイムリーなポップカルチャーの引用が多発。エイプリルのイジメは今の時代を反映。黒人文化の色も濃い。かなりキャッチーでウケの良い作風なんじゃないかなと思った。

【キャスト】
豪華なキャスト陣。スプリンター役のジャッキー・チェン良かった。その他、ジョン・シナ、ポール・ラッド、ローズ・バーンなど豪華なミュータントたち(鑑賞中は気づけなかったけど)。ビッグネームを脇に据え、主演4人は等身大重視の新人起用だった事も好印象。かなり合ってる。ナイスキャスティング。

【吹き替え】
中盤までは日本語吹き替えで鑑賞。オリジナルのリアルなキャスティングが良すぎて、日本版は大人が子供のマネをしているような不自然さがちょっと気になった。今作に限らず、日本アニメも短期間の拘束で済む単発映画作品とかだったら子供の役は子役をキャスティングしたらいいのになぁと思う。

【総括】
テーマ性的には、理想の「X-MEN」を1作目から完結作まで見たような内容。既にコミックカルチャーで不動の位置にいるタートルズをもう一度客観的に捉え、現代に落とし込んだような着眼点には惹かれた。
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