しょう

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCEのしょうのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

完成披露試写会にて鑑賞。
1時間59分59秒23コマに込められた濃密な正義の物語に心揺さぶられた。

話の縦軸を貫くのが、
「シビュラシステムの統治する時代に旧時代の『法』が必要なのか」
という提起。
そして、それは同時に人々に「正義」を問いかけることにも繋がっており、
また、朱ちゃんがこれまで自問自答し続けていたことにも繋がる。

ストーリーとしては、そのテーマに「ストロンスカヤ文書」と呼ばれるシビュラシステムを揺るがしかねない鍵を巡る攻防が交わっていく。

攻防においては、海外調整局局長&慎導篤志・外務省行動課・1係・ピースブレイカーなど、様々な思惑が入り混じり、事態を流転させていく。
それぞれの背後にシビュラシステムという「絶対的な」存在があり、その影響からは逃れられないところは、この作品を見る上では欠かせない視点だと改めて感じる。

前半のクライマックスは、出島での攻防において雑賀先生が亡くなるシーンだろう。覚悟を決めた目で朱に言葉を遺すシーンは今思い出しても泣きそうになる。雑賀先生…。
(ここで見るのが1回つらくなった)

海外調整局の局長は誘拐され、失うものが多い一戦であったが甲斐の意味深な言葉から敵のアジトの場所を特定する。
その後、組織への密偵であった甲斐(=アキラ)がその正体を明かしたことで、PSYCHO-PASSをクリアに保ったり、ゾンビのように人を外部から操ったりする「ディバイダー」といった装置の存在や、表のトップである砺波の居場所が明らかになる。
しかし、その喜びも束の間、局長の翻訳チップが「ディバイダー」のように発動し、狡噛さんは負傷、局長は強制的な自決をさせられ、抗ったアキラも自ら死への舵を切った。。
そして、アキラの命を結果的に奪った篤志も自分の死を持って1つの区切りをつける。

そこまでして死守した「ストロンスカヤ文書」。
それをあっさりと「砺波に渡せ」と禾生局長から命令が下る。
反発する朱は、1係と行動課に協力を要請し、砺波のいる北方4島に乗り込む。

須郷さんと雛河くんの奮闘で通信を掌握し、狡噛さん・宜野座さん・フレデリカの奮戦で根城を制圧していく。
朱は同時に砺波と相対する。明かされるピースブレイカーのトップ「ジェネラル」の正体。それはかつて、シビュラシステムをサポートするために作られたサブシステムだった。

しかし朱にとってこれは予想通り。
それを見た砺波は、シビュラシステムの正体を知ったうえで「法」の重要性を訴える朱を理解できない。
ならばと、ジェネラルの「意思」を信じストロンスカヤ文書をジェネラルに投入する朱。結果、ジェネラルは紛争を拡大させない方向性を選び、シビュラシステムに吸収され消滅する。

その後、駆けつけた狡噛さんに撃たれて、砺波は死を迎える。
だが、シビュラシステムによって国防軍に選ばれ、ピースブレイカーに選ばれ、重責を押し付けられ、そしてシビュラシステムのサブシステムに委ねた一生。砺波の思いにも計り知れないものがある。

そして、ラストシーン。
朱は、公衆の面前で禾生局長を射殺する。
自らを犠牲に「正義とは何か?」を世の中に問いかける選択肢を選んだ朱。
何も知らない人々には唐突だが、起こるべくして起きた事態。
これまで託されてきた朱が託す番に。

こうして話の幕が閉じた。

エンディングの『当事者』を聞き、改めて物語を反芻。
思わず吐息が漏れる。この2時間弱て起きたことを受け止めるのには、まだ早いと感じた。

シビュラシステムの世の中で正義を問う中で、紡がれ繋がれてきた人々の思いを映し出した本作。

とりあえず2回目を観に行くこと、3期を見直すことを決めて劇場を後にした。

(追記)
3期&FIRST INSPECTORを観たあとに、再度本作を鑑賞。理解が格段に深まった。そしてさらに考えたいことが増えた。
しょう

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