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ヴィーガンズ・ハムのYAEPINのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.8
カニバリズムをポップに描き、かつ社会風刺も織り交ぜ絶妙なバランスで仕上がった作品。

肉屋の夫婦が衝動的にヴィーガンを殺してしまい、ひょんなことから?その肉を食べたらあまりに美味しくて、ヴィーガン狩りを始める…というトンチキストーリーだが、金儲けだけでなく、自らの美食を極めることが目的という点が興味深かった。
美食のためにフォアグラを作ったり、仔牛を積極的に食したりすることが許されるなら、「美食」という目的を置けば人肉食も許されてしまうような気になってくる。

ヴィーガンの肉の虜になった夫婦が、その美味しさを神戸牛と比較していたが、神戸牛がそんなにも世界的に美味しいとされているとは知らなかった。

夫婦がヴィーガンを狩るためにヴィーガンのフリをして近づこうとする際、妻の演技に熱が入りすぎていて面白かった。

劣悪な環境の牧場や、家畜に過剰な生殖を強いることには胸を痛めるばかりだが、かといって肉食を完全否定する考えには全く共感できない。
ましてや最近、美術品にスープ缶が投げ付けられる事件が頻発していることには怒りを感じる。
そのスープ缶がもったいないという意識は無いのか?と思うし、自分の主張を飛躍した論理で攻撃的にぶつけてくる行為が正しいとは思えない。

過激で建設的でない思想家をぶった斬るブラックコメディ作品だったと思う。

妻が、普段ハマっている犯罪実録番組に触発されて犯行手口を思いつくのも皮肉な構造だった。
私もその手の番組が好きなので何とも言えないが、犯罪をセンセーショナルに取り上げることは、新たな犯罪に繋がりかねないこと示していた。

また、冷めきった夫婦はヴィーガン狩りを通して仲を深めていくが、確かに肉を美味しそうに喰らう様子は、何故だかエロティックな雰囲気を持っていた。
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