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DOGMAN ドッグマンのYAEPINのレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
4.7
びっくりしたあ〜〜めちゃくちゃ面白かった…...!

リュック・ベッソンの闘う女性大好きぶりは、もう分かったよ〜と思って『LUCY』以来観ていなかったし、本作の予告も全く触れていなかった。
さらには、冒頭から「これは犬を多頭飼いしている異性装のクセモノの話です!!」と手の内を明かしてしまうし、これは映画が上手くないのでは…?と不安だったが、気がつけばまんまとのめり込んでしまった。
トラディショナルでベタすぎるきらいもあるが、きちんとタイムリミットを置き、わくわくするクライムアクションや胸を締め付けるような展開を矢継ぎ早に繰り出すリュック・ベッソンは、やはりエンターテインメント映画の猛者に間違いない。

そして、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技に本当に惹き込まれる。何故、本作で何の賞にもノミネートされていないのか不思議で仕方ない。
理知的な犯罪者と調べる者の対峙、という意味では『羊たちの沈黙』を思い出したが、彼が演じた「ドッグマン」は父親に苛烈な虐待を受けており、穏やかでクレバーな話し方は生育環境ではなく、シェークスピアから身につけたものだった。
彼は装うことで過去に蓋をし、自分を守る。
そしてその装いこそが、普段惨めでみすぼらしい彼を輝かせ、生活をも支えることになる。

これまで数々の女性を繊細に逞しく、魅力的に描いてきたリュック・ベッソンが、ドラァグというテーマを扱ってくれて心からよかったと思う。
彼の作品に多用される青いライトは、燃えるようなリップの色と鮮やかな対比を成す。
そしてエディット・ピアフ1曲分をまるまる費やしたステージシーンが圧巻だった。

そしてこの主人公はもちろん、神(GOD)から見放された代わりに、犬(DOG)に愛された男である。
今年の犬映画は紛れもなく『落下の解剖学』だと思っていたが、一瞬で塗り替えられた。
あまりにお利口すぎて顔がほころぶ一方、この頭数の犬を制御するだけで膨大な時間がかかると思うと気が遠くなる。

最後に、リュック・ベッソンの女性の描き方の魅力はしっかり女性にも発揮されていて、聞き役となる精神科医の女性も寝起きのシーンから目を奪われた。
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