Punisher田中

ヴィーガンズ・ハムのPunisher田中のレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.9
夫婦のヴィンセントとソフィーの仲は最悪だった、いつ離婚してもおかしくないくらいに悪化している。
尚且つ、営んでいる精肉店の業績も振るわない。
そんなある日、店が過激なヴィーガンの活動家に襲われたことで衝動的にヴィンセントは活動家の1人を殺してしまう。
証拠隠滅のためにヴィンセントは遺体をハムに加工するのだったが....なんと、そのハムをうっかり売ってしまう....

ハイ!ダメ〜!(モラル的に)な傑作!
近年の「未体験ゾーンの映画たち」からかなり飛躍した作品ではないだろうか。
人間のハムにヴィーガンのブラックな風刺が添えられたブラックコメディスプラッター。
ヴィーガンの肉だから美味い!だけではなく動物同様に、ストレスの少なさ/良く肥えているか等のチェックもあって質をしっかり大事にしている点に笑い転げたけど、肉屋からしたら真剣な箇所だよな。
この様に大味B級作品かと思いきや、丁寧な描写が至る所に存在しているし、カメラワークや映りもハイレベルでビックリした。
倫理観と欲望の葛藤を映し出す前半と手口に慣れてゆき、生活や人格がガラッと変貌する後半のギャップの使い方が上手い2部構成で話運びもスムーズだし、前半から後半への繋ぎがダイジェスト化されて後半も人物描写が丁寧なので変わった部分がわかりやすいのも非常に綺麗!しっかり魅せるつくりになっている。

金と共に得た物と消えた大事な物をよく考えながら作品と向き合うと、より楽しめる。
ラストのマッチアップは本当にアツいし上手い約90分内でしっかり要素を結びつけてまとめ上げることに成功しているのがまた上手い。
生き物の命をいただくという行為だけでなく日常の小さな人との向き合い方にも気づきをあたえてくれる、豊かな一作だった。
やっぱり何事もほどほどが1番だよね。