HAYATO

正欲のHAYATOのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
2024年111本目
正しさとは一体…?
『あゝ、荒野』の岸善幸監督&港岳彦脚本コンビが、第34回柴田錬三郎賞に輝いた朝井リョウ原作のベストセラー小説を映画化。
検事の寺井啓喜は、不登校になった息子の教育方針をめぐり妻と衝突を繰り返している。ショッピングモールで働く桐生夏月は、中学の時に転校していった佐々木佳道が地元に帰ってきたことを知る。学園祭実行委員としてダイバーシティフェスを企画した神戸八重子は、大学のダンスサークルに所属する諸橋大也に出演を依頼する。
第36回東京国際映画祭のコンペティション部門にて、最優秀監督賞および観客賞を受賞。
出演は、稲垣吾郎さん、新垣結衣さん、磯村勇斗さん、佐藤寛太さん、東野絢香さんなど。
主題歌は、Vaundyの『呼吸のように』。めっちゃいい曲。
家庭環境、性的指向、容姿など様々に異なった「選べない」背景を持つ人たちが生きる道を模索する姿を映しながら、とある事件をきっかけにまったく関わりがないかと思われた登場人物たちの人生が交錯していく様を描いている。
多様性が謳われる現代では、様々な考え方が理解されやすくなったのかもしれないけど、それでも周囲に理解されない人がいるのも確か。誰にも言えない、誰にも理解されない気持ちを抱えながら生きることがこんなにも辛いことなのかと、胸が締め付けられる。
そんなマイノリティの苦悩を描くと同時に、マジョリティ側の視点も含む本作では、「あり得ない」という思考から抜け出せない検事にイライラしつつも、自分も日常生活で人を「普通」に当てはめてしまっていることがあるなと複雑な思いを抱いた。
「普通」ができない人間はシステムのバグと一緒という考えがいかに愚かなものかを実感した一方、底知れない性的な欲望を抑えきれずに犯罪を犯す人もいるという現実もまた存在し、何をどこまで寛容すべきなのかというのは非常に難しい問題だと思った。
登場人物の心情を表現しているかのような「水」の映し方がとても美しい!
HAYATO

HAYATO