綾

西部戦線異状なしの綾のネタバレレビュー・内容・結末

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

アカデミー作曲賞を受賞したの、めちゃくちゃ納得です…… ドゥードゥードゥンッ っていうあの音楽、今も耳に残っている。素晴らしいサウンドトラックだった。

冒頭ハインリヒのネームタグ、洗濯、縫製、遺体処理…… 物凄かったな。淡々としていて。

食事がとてもキーとして描かれていた気がする。上層部の豪勢な食事と、戦闘中でも貪り食う兵士たち。教会で自ら命を絶ったチャーデンを見ながら、彼のスープをすすった見知らぬ兵士。前線でおびただしい死者が出ている中、クロワッサンが焼き立てかどうかを気にする司令部の人間……

「仲間に会いたいです!」「俺は母親に会いたいよ!」

父親が「英雄」で、「私は遅く生まれ過ぎた。半世紀戦争が無かった」と語ったあの将軍。往々にして、トップに立つのはこういう人間よね…… 数字や文字の上でしか、戦争を知らない人間。

そんな戦争を知らない世代が新たな英雄になろうとしてしまわないよう、こういう映画は何度だって作られるべきやね……って考えて、でも…… と思う。どの国のどんな時代にも、一定数のそうした層はきっと確実に存在するし、“その他大勢” の加担や無関心がなければ、暴力は本来まかり通らないはず…… 人間は、本当に集団催眠にかかりやすい生き物なんだなと改めて。

原作小説、映画があの時代に作られ評価されていてもなお第二次大戦があったのやから…… 気が遠くなってしまう。私たちも、しっかり気を引き締めていかないといけないね。

青年から青年、そしてまた青年へ……
“戦争終結15分前” の描き方も、強烈に心に残っているな……

リメイクの良さ、オリジナル版とはまた違った素晴らしさをたくさん感じた。同時に、大切なことは何度も、何度でも、アプローチを変え、言葉を変え、語り継がれていくべきやなあって。79年版もぜひ観てみたい。

わかっていても、エンドタイトル「西部戦線異状なし」に鳥肌が立った。本当に、すごいタイトルや……

観られてよかった。ありがとう。
綾