冒頭のとりわけ泣くようなシーンでもないのかもしれないけれど、“スティーブン•スピルバーグ“という偉大な人物を創り上げた起源ともなるであろう幼少期の映画とのかけがえのない出逢いやそのきっかけをつくってくれた両親との深い絆、それに彼らの我が子への溢れんばかりの愛情を感じずにはいられず思わず泣けてきた。スピルバーグ作品を多く監修してきたジョンウィリアムズの優しさで包んでくれるような素敵な音楽や何があっても一途に応援してくれる愛情溢れる両親を体現していたポールダノ、ミシェルウィリアムズの演技•表情•存在感の高さなどが相まってよりいっそう作品に引き込まれた。世界でも指折りの偉大な映画監督、名誉も実績も兼ね備えたスピルバーグも我々と同じようにいやそれ以上に人種や家族との確執•すれ違いなどで思い悩み苦しんでいたんだなと。楽しいことだけでなくそれらの辛い出来事や悲しい思い出も含めた経験•生い立ちすべてが今のスピルバーグという人物を構成し彼らの素晴らしい作品を生み出したんだと感じたし、逆に、そういう経験があったからこそ素晴らしい作品の数々が誕生したんだなと思った。同時に、彼の生い立ちに迫る自伝的作品の本作に触れたことで、どんな経験も自分の糧になり強く優しくなれたり、辛い思いをすることでより愛情を知れたりできるんだと思ったし、どんな瞬間•思い出も大切なんだと暗示的に気付かせてくれた気がする。映画の素晴らしさや家族の愛情、人生の尊さに改めて気付かせてくれた本作を経て、よりいっそうスピルバーグのことが好きになったしこれからも追い続けていきたいな。
