Ryoma

オッペンハイマーのRyomaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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ノーランお得意の物理学・科学の知識が、原爆が完成するまでの過程の中に綿密に盛り込まれていて、専ら文系の私には到底理解できなかったけれど、原爆製造に賭ける彼らの熱量と、そこまで駆り立てられる義務感にも似た衝動に背筋が凍るような猛烈な不快感を全身に覚えた。同時に、彼に間接的にそうさせた戦争やナチスの悲惨さ・残虐さ・非道さなどをこれでもかと感じ、伝記映画であるのと同時に、一種の強烈な反戦映画だと感じた。
音響賞にノミネートしていただけあって、爆発描写時の身体の芯まで抉ってくるかのような迫力が凄まじく、疑似体験でもないけれど、微小ながら恐怖を自分の身体で感じれた気がする。いざ実体験をされた方々の恐怖や絶望は言葉では到底に表現できないほどのものだったことは本当に言うまでもないだろう。
オッペンハイマー。彼も例外なく1人の人間であり、自分のしたことに悩み苦しみ、第三者が想像しがたいほどに自らを責め思い詰めていたのだろう。世間には国を救ったと讃えられながらも、繊細な人柄ならではの懺悔の思いに苦しむ彼の葛藤する姿は、まさに戦争というものの哀れさ・醜さを物語っているようだった。
日本人の視点で観た本作はほんとに特別。米国🇺🇸の方たちの目にはどう映っているのだろうか。自国を救い戦争を終結させた英雄なのか、それとも、非道な兵器を開発した悪人なのか。本作を観て世界の人々が果たしてどう思うのか、それがこれからの世界・社会において、極めて重要だと感じた。
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