想い合っていても意図せず離れてしまった2人の気持ちは、推し測るのも億劫になるほどに辛く苦しかっただろうな。再会を果たした2人の姿を見て嬉しい気持ちはありながらも、数十年の月日は離ればなれの彼らにとっては長すぎる期間で、気持ちも生活スタイルも社会情勢だって変わっていくものなのかもしれないし、再び再会したとしても、必ずしも良い方向に進んでいくとは限らない。それでも、再会を果たしたときの表情を見ていると、“運命“とか“世の末“という言葉で片付けたくないほどに、2人の想い合う気持ち、愛の深淵さが窺え、想い合う気持ちに時間も距離も関係ないんだと感じた。社会の不条理や理不尽な出来事など、当事者のみの力ではどうしようもないことが生きていれば度重なり降りかかることがあり、それによって離ればなれになったり、時を隔てたりしても、お互いを想う気持ちは色褪せず消えやしないんだと強く信じたくなった。
主演の2人はもちろんのこと、『キャロル』『ファースト・カウ』に出演しているジョン・マガロの、優しさが滲み出た雰囲気や表情、醸し出すオーラがとっても良かった。
昨年のアカデミー賞ノミネートの『アフターサン』同様、心地よい余韻に浸れ、人を想う気持ちの大切さ・素晴らしさを感じられる素敵な作品だった。A24制作の作品は本作や『アフターサン』のようなゆったりとした中にも“人生“や“生き方“について考えさせられるヒューマンドラマ・ラブストーリーが個人的に合っているなあと思った。
