Ayax

フェイブルマンズのAyaxのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.8
映画うま男爆誕ストーリー。
去年から噂はかねがねで、スピルバーグの新作が自伝映画ってどんな感じかよと思ってたら、トロント国際映画祭の観客賞を獲って、アカデミー賞作品賞受賞にかなり近付いたし、賞が賞だけに(観客が選ぶ賞だからね)すごい面白いのだろうなと期待していた。
年齢的に成熟してから撮り始めたわけでなく、幼少期から映画制作の虫だったのね。
そして、どの程度、実話が混ざってるのか不明なんだけど、撮影のきっかけを与えてくれたのが母親で、サミー(主人公)が彼女について知りたくなかった部分までカメラで捉えてしまうなんて皮肉だ。遅かれ早かれとはいえ、彼女にそれを自覚させてしまうことになって、家族がバラバラになるきっかけの一つを作ってしまったとも言える。
「映画監督は心をズタズタにされる仕事だ」という台詞があって、それでもやりたいんだ(これしかやりたいことがないんだ)とこの映画でスピルバーグが言ってると思ったし、「バビロン」でも近いことをデイミアン・チャゼルが言ってる気がするな。
高校卒業前の3年生の"Ditch Day(おサボり日と字幕が付いていた)"というイベントの撮影と編集もサミーが任されるんだけど、もうすんごい映画うま男なの。上手すぎて笑う。
終盤、「怒りの葡萄」のジョン・フォード監督(?)のオフィスで彼とサミーが面会する場面があって、「(映画の画作りにおいて)地平線がめっちゃ下だと面白い。地平線がめっちゃ上でも面白い。地平線が真ん中だと死ぬほどつまらん。がんばれ」みたいなエールを貰うシーンが最高だった。
あと、カメラとか機材が進化してくのも興味深かったなー。
映画監督としてデビューする前でこの映画は終わるので、過去作観てなくても大丈夫だと思うけど(私も有名な作品でも観てないのたくさんある)、所々でその片鱗というか後の作品とのリンクが見えるのかなとも思うので、詳しい人はより楽しめるのではないかな。
この映画、生きてるうちに本人が撮れて良かったよね。
そして、ジョン・ウィリアムズの音楽が流れると、映画だ〜私映画観てる〜と思わされる現象。彼の音楽が映画の原体験そのものという人も多いのでは。映画界の生き神。今年90歳。スピルバーグもインタビューで「彼は地球の宝」と言ってる。私も「ジョーズ」の感想で同じこと思ってたのでうれしい。撮影は「ウエスト・サイド・ストーリー」でもタッグを組んだヤヌス・カミンスキー。
映画そのものに愛がある人は必見ということでいいと思う。
個人的には、ポール・ダノとセス・ローゲンだったら、セス・ローゲンといた方が楽しそうではあるよねと思った(何の話)。
お猿さん、演技上手い。
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