試写会にご縁があり、観賞。
貴重な体験を、ありがとうございます。
宮沢賢治は、【自己犠牲】に生きた男だった。
「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」
あまりにも有名なこのフレーズで始まる詩の続きは、意外にも広く知られていない。
この詩のテーマは、実は、人のために生きるというもの。
究極的な【自己犠牲】への美学。
そこに宮沢賢治文学の真髄がある。
そして今作『銀河鉄道の父』は、宮沢賢治にまつわる、いわばアナザーストーリー。
宮沢賢治の父である政次郎は、長男である賢治を玉のように育ててきた。
政次郎は賢治と中々相いれなかった。
賢治が信じている道を理解することが出来ずにいた。
そんな中、賢治の最愛の妹、自分の愛娘であるトシを結核で亡くしてしまう。
深い悲しみの中、彼女が生前愛した賢治の文学、彼女のために賢治が紡いだ文学に、政次郎は触れ、魅了された。
残酷にも、夢半ばで賢治にもまた、トシと同じ病が襲った。
なぜ政次郎は、最終的に賢治の人生のテーマであった【自己犠牲】を理解するに至ったのか。
その答えを、この映画が教えてくれたような気がする。
政次郎もまた、賢治のために自らを犠牲にし、宮沢賢治文学を守り、沢山の人に知ってもらえるよう、懸命に生きたからではないかと私は思った。
それが、後に宮沢賢治が国民作家と称されるようになるきっかけとなったのだと。
『雨ニモマケズ』の一節、
「アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズ二」
これを体現した親子の絆。
とても温かくて、美しい作品だった。