このレビューはネタバレを含みます
「子供って乾く前のセメントみたいななんですって 落としたものの形がそのまま跡になって残るんですよ」
それを信じる整君は色んなものを落とされてボコボコになった、まだ乾ききってない汐ちゃんにカウンセリングを勧めた。
誰もが作り立ての道路のように、ツルツルの大人になれるわけじゃない。
たとえツルツルの状態で大人になれても、道路は色んな要因ですり減って、ひび割れて、穴が開く。
それでも、ツルツルに近い状態で大人を始められるなら、その方がいい。
後に補修するときに、大変さが違うから。
きっと、ボコボコの状態で、あるいはセメントに落とされたものを回収すらできずに、奥深く埋まったまま、固まってしまった大人が沢山いる。
理紀乃助も、ゆらも、新音も、そんな大人の一人だろう。
じゃあ、固まりきってしまったセメントを治す術は無いのか。
私はそんなことないと思う。
削って、壊して、取り除いて、新しいものを注いでも、中々定着しないかもしれない。ボロボロに崩れてしまうかもしれない。
苦しくて、痛くて、果てしない道のりであるけれど。
やりようによって対処できると知っていること。必ずくっついて、より丈夫になれると信じること。
大人だって、できるはずだよね。