Fumie

aftersun/アフターサンのFumieのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ちょっと、良すぎて大満足、エンドロールで大感動(余韻)
離れて暮らす父と娘の旅、お互い近すぎず遠すぎずの微妙な距離感で、それでいて愛情表現はしっかりとしていて、喧嘩もするし、気配りもする、離れて暮らしているからこその距離感なのかな
30歳という若さで11歳の娘がいる、その責任の重さに向き合えず苦しみ、愛しているのに一緒には暮らせない、どこか大人になりきれず、だけどそれに対する後ろめたさもあり、悩み苦しみ自分を責めて、メンタルヘルスの問題は明らか

太極拳みたいな動きとか呼吸法とか、瞑想のHow to本があったりとか、自分と向き合い居場所を探しているような、愛する娘に全振りできない自分を救いたいのか、ずっとどこか苦しそうだったな

娘は11歳で大人に憧れるし子どもでもあるし、ちょうどその年齢、絶妙な年齢
父の複雑さをなんとなく感じながらもまだ子どもでいたい、だけどそれとなく気遣ってみたり、わがまま言ってみたり、まだ水に潜れなかったり...
自分が当時の父親の年齢になって気付くことって当たり前のようにたくさんある
子どもの頃の楽しい父親との夏休みは、ただただ無邪気に楽しくて美化されるかもしれない、だけどそれがビデオテープに残っているというのは当時のそのままが残っているということであり、それってある意味現実を突きつけられるというか、知らない方が良かったってこともあるかもしれない
映像を見ることで、そこから感じ取ってしまう父親の当時の感情、なんか残酷でもあり、有り難くもあり

父親が心に葛藤を抱いていたからこそ、子どもはそれを敏感に感じ取ってしまう部分もあるけど、それでも一緒に遊んだ楽しい思い出で埋め尽くされるしそれが上回るのが子どもだろうし、大人になって改めて当時を振り返り当時感じ得なかったことや忘れていた感覚を思い出して、ソフィはどう思っただろう。

ソフィが裸足で、父がトルコで購入した絨毯を踏み締めたあの場面、とても印象的に残っている。
裸足で感じる思い出、トルコ絨毯の持つ「それぞれの物語」それを通して父親を感じる、切ないけどすごく素敵な贈り物だと思った



最初の場面、大人になったソフィがビデオを見ていることに気づいた。テレビ画面にソフィが映っているじゃないか!
ストロボ映像でソフィが立っていて、父親の姿を探しているように見えた。
宿についてツインの予定なのにベッドひとつの部屋、右腕にはギプス、最初からどこかうまくいかない様子がカラムの窮屈さみたいなものを表してる気がした
ギプスを必死で切ってる場面、苦しそうだったな、必死で何かから解放されようとするような印象、次の船上の場面でギプスの外れた手をソフィが上からそっと握ってる(抱えてる)のがすごく温かかった、それを見つめるカラムの視線も
40歳は想像つかない、30歳の自分にも驚く、とインストラクターと話していたけど、今まで必死に30歳まで生きてきたんだな...そして今も生きることで精一杯なんだろうと感じた

ソフィが遊び疲れてベッドでぐったりしながら「すごく楽しかった後に落ち込むような感覚パパにはない?」と言った後のカラムの表情、からの鏡の自分に向けて口に含んだ歯磨き粉を吹きかけた場面、印象的だった
気分の浮き沈みにようなもの、メンタルヘルスの問題に対して自分を責めるような、嫌な自分を払拭したいような、そんな感じ

喧嘩したときのカラムの心境が見ていて痛くて、夜の海に入っていき裸のまま泣きベッドで眠る、ソフィは鍵がなくて部屋へ入れずレセプションの人に開けてもらい入る、ベッドに横たわる父を見てそっと毛布を掛ける、お互いを愛し労わる気持ちが見ていて痛い

翌日バスツアーに出かけた2人のやりとり、カラムの真似をしたり、泥風呂で泥を塗りあったり、遺跡でソフィーがツアー客と一緒にカラムへバースデーソングを歌ったり、全てが愛おしい瞬間
でもバースデーソングを聴くカラムはどこか悲しそうで辛そうで、あなたはいい人という歌詞に対して自分を卑下しているような、昨日の自分を悔いて責めているような

最後の夜のダンスでのハグと、ソフィの頭の中での父とのハグが同時に流れるのは秀逸、号泣

ソフィが最後に見た父の姿は空港で見送る姿で、最後大人になったソフィがビデオを見終わりそのまま最後の父の姿のシーンになるの、そして背を向けて去っていくシーン、もう会えないという切なさが胸にじんじんくる
Fumie

Fumie