ぬ

理想郷のぬのレビュー・感想・評価

理想郷(2022年製作の映画)
3.7
そんなに執着するほどよい土地なのだろうか…!?
あの夫婦の最大の移住目的は「幸せに穏やかに平和にスローライフを送ること」というより、「この村で自給自足して生きる」だったんだろうか?
本来思い描いていたであろう「素敵な田舎暮らし」があの村では叶わないって途中から本人らもわかってたはずなのに、「移住してしまったし、もう引けない」と意地になってる感があり、本来の目的はどうなってん、というかんじ…
嫌がらせされてイライラするし、ぶん殴りたくなるし、殴り込みに行きたくなる気持ちもわかるけど、話し合ってもわかりあえなさそうな相手とは、直接やり合わんほうがいいよ、ほんと…危険すぎる…

村で生まれ育った人たち側の気持ちも理解はできるのだが(特に「俺らはもうこの村で生きるしか選択肢ねぇんだよ」っていう切実さ)、それにしてもやり方がクソ。
好きで生まれついた訳でもなく出て行きたくても出ていけないが、人生のすべてがそこに詰まっていて、もはやアイデンティティの一部となっている、その土地への愛憎、計り知れないな。
女と結婚したいのにできない、みたいなこと嘆いてたけど、それは…田舎モノだからとかではないのでは…?
まぁ物理的に人少なすぎて交友関係築く相手がいなさすぎるとか、まともなコミュニケーション能力が身に付けられなかったのは、閉鎖的な田舎で環境的にもかなり原因はあるか…
基本的にコミュニケーションや人間関係の築き方がマウンティング、マーキングみたいなやり方でしんどい。
あやつらにとっては余所者をイビるのは娯楽でもあるだろうな。

移住するなら、やはりもう少し移住先の歴史とか、どんな人が住んでるのかとか、その村の警察のこととか調べないといけないんだな、という学び…
夫婦で移住するにしても、移住先に女性、それも同世代の女性が全然いない土地は、妻にとってきつすぎんか?
あの村に何度か遊びに行って酒場に通えば、移住前にヤベえ住人がいるとに気付けたような気がする。

あと母娘の関係見てて、私は娘の気持ちになっちゃったわ。
娘は母と過ごして「母からの目線で物事を見る、妻目線で自分の父を見る」ことを学べていたと思うけど、母は?
母は「娘の目線で、子ども目線で自分の夫を見る」をしてない気がした、親という立場として娘の悲しみと不安をまず肯定してあげてほしいというか。
この母親はなかなか言葉足らずで、夫にも娘にも、もっと言葉で自分がどう考えててどうしたいのか具体的に伝えたらいいのに、と思うことだらけだった。

犬と羊だけが癒やしでした。
マジで番犬としての役割は皆無だけど。
原題からするに兄弟が犬に懐かれてるのは、犬が彼らに自分と似たものを感じてるからってことなんだろうか。(犬が好きなワイルドなニオイするから好かれているってわけでは、ない…?)
でも「田舎もんは獣のように野蛮だからこんなことするんだよね〜」ってことはないと思うんですけどね、なんたってモメてる内容に金が絡んでるからね。
人間特有のモメごと、モメ方だと思うぞ。
ぬ