ほり本こう大

春に散るのほり本こう大のネタバレレビュー・内容・結末

春に散る(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

運が悪いことに、独り言がえぐすぎる二組のジジババ夫婦に挟まれ席は大ハズレだったが、ボクシング映画にハズレはなし。

春夏秋冬、一年を通して、ドン底へ堕ちたボクサーが死に物狂いで這いつくばり、一丁前に成長する。
師弟関係、打倒王者、噛ませ犬、チンピラ、ヒロイン、家庭環境etc…。
ボクサー成長譚にはあるあるの―使い古され一見不必要だと思われる、しかし寧ろ必要不可欠な―要素をふんだんに盛り込み、それがわかっても尚、抑えられないほど心が踊る。心が、とにかくアツい。
そんな要素に加え、展開までもが王道。シンプルが故に容易に先が読めるだろうが、それは問題ではない。このアツさだけは決して読めないのだから。

絶命の、失明のリスクがあれど、"今"を生きる男たちは恐れることなく、チャンスを掴みに行く。
あの「一瞬」のために、死ぬ気でもがき苦しみ、全力の拳で語り合う。
全てを出し尽くしたあとは、没入感の凄さからこちらまで疲弊している。
そしてラストの桜が舞い、タイトル回収―。
心が震えた。
ボクシングって、ボクサーってやっぱりかっこいい。