ベビーパウダー山崎

ブラックアウトのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ブラックアウト(1997年製作の映画)
3.5
海があり、静かなホテルに男と女がいて、テレビ画面を抱きしめている。ダウナーにラリったゴダール映画のような面もある。「ビデオこそ未来だ!!」と叫ぶデニス・ホッパーは当然のようにポルノ業界に蠢く狂人だが、妙に冷めた態度はフェラーラのキャラクター。
後半は記憶のフラッシュバック、夢からの恐ろしい現実。その一歩も前に進まないぐだぐだ感は『ニューローズホテル』と同じ。この時期のフェラーラー、どん詰まりで絶望的な、飢えた犬が自分の尻尾を延々と追いかけているような映画ばかり撮っている。
どこにも居場所がなく、己の弱さから招いた過ちはどれだけ幸福でもついて回る。気持ちが落ちていると引きずられる。薬で狂って若い女を殺して自殺して、何もかも失った男の姿は作家のロマンチシズムでありナルシシズム、VHSビデオの荒い画面から滲み出てくる夜の海に飲み込まれる。