MrOwl

NOCEBO/ノセボのMrOwlのレビュー・感想・評価

NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)
4.1
エヴァ・グリーンの口元から虫が這い出るキービジュアルが印象的で、共演がマーク・ストロング、監督が「ビバリウム」のロルカン・フィネガンということで、観賞してきました。「ビバリウム」同様、不気味で得体の知れない恐怖が描かれた作品です。物語の舞台はアイルランド島東部に位置する、アイルランドの首都であるダブリンです。政治・経済・交通・文化の中心地であり、アイルランドの全人口の44%がダブリン首都圏に集中するアイルランド国内最大の都市である[2]。ヨーロッパ有数の世界都市であり、重要な金融センターのひとつになっている大都市で、ファッションデザイナーとして名を馳せるクリスティーン(エヴァ・グリーン)と、マーケティング・ストラテジストとして仕事をしている夫のフェリックス(マーク・ストロング)と幼い娘のボブス(ビリー・ガズドン)の3人家族。ダブリン郊外で悠々自適に暮らしている様子。車も2台、家も3~4階建てのようで、庭も広く、裕福な暮らしをしていることが伺えます。そんなある日、仕事中にクリスティーンはダニに寄生された犬の幻影に襲われます。直前に掛かって来た電話の内容にもショックを受けている様子で、何かが起きたようです。場面は転換して8ヶ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣、記憶喪失や幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされており、仕事も以前のようにはしていないようです。そんな彼女の前に、唐突にダイアナと名乗るフィリピン人の家政婦が現れます。クリスティーンは雇った覚えのない乳母を最初は怪しみますが、自身の体調不良もあり、ダイアナを家に招き入れます。そしてダイアナは伝統的な民間療法を用いてクリスティーンを治療する、と言い、体調が良くなったクリスティーンはダイアナを信頼していきます。やがてクリスティーンは民間療法にのめり込んでゆくが、それは一家を襲う想像を絶する悪夢の始まりだった――という感じで、幸せな一家に不意に訪れた闖入者により、不可解なこと、不気味なことが起きはじめ、家族の均衡が失われていきます。ダイアナの目的は何か、家族はどうなるのか、不気味な緊張感が全編を通じて漂っており、ダイアナの目的も徐々に明らかになっていきます。終盤の展開は想定通りのところと、意外なところが両方ありましたが、「ビバリウム」の監督だと思いなおすと、意外なところも腑に落ちました。東洋的な呪術の興味深さ、不気味さと、蟲が蠢く不気味さが独特な印象を与える作品ですね。ダイアナがフィリピン人であるというところもなんとなく神秘的な、不可思議な儀式のリアリティを出しているように感じました。呪術的な怖さもさることながら、家族や親しい間柄に、無関係な第三者が入り込み、従来の関係を破壊する怖さは実際のカルトやスピリチュアル、何かの権力争いなどで起きる殺人事件でも示されているのでそうした怖さも感じられる作品ですね。
ちなみに、タイトルのノセボ、とは、所謂プラシーボ効果(プラセボ効果)の逆の意味で使われるようです。プラシーボ(プラセボ)が、薬効がないのに、人体が薬が効いたような反応を示すのに対し、人体に害を与えるような成分などはないのに、クスリの副作用・有害事象のような現象を惹き起こす危険があることをノセボ効果、というそうです。本作で初めて知りました。そういうタイトルが付けられていることもなかなか良い演出ですね。
以下、出演者、監督の参考情報を。
主演のエヴァ・グリーンは、フランス出身の女優さんです。「007 カジノ・ロワイヤル」「ライラの冒険 黄金の羅針盤」「サブリミナル」「シン・シティ 復讐の女神」などに出演しています。「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」は特におすすめですので、未視聴の方は是非。
夫のフェリックスを演じるマーク・ストロングは英国ロンドン出身の俳優さんです。血筋で言うとイタリア人の父と、オーストリア人の母のもとに生まれているそうです。ベビーフェンスから悪役まで幅広くこなすので、知っている人も多いかと思います。ガイ・リッチー版シャーロックホームズ、キック・アス、グリーン・ランタンなどに出演していますが、「裏切りのサーカス」「ゼロ・ダーク・サーティ」「キングスマン」「キングスマン:ゴールデン・サークル」などの演技が印象に残っているかと思います。近年では「TAR」にも出演していますね。
本作の重要人物、ダイアナを演じるチャイ・フォナシエはフィリピン出身の女優・シンガーソングライターです。強烈な演技で爪痕を残していますので、また別の作品で観るかもしれません。
監督のロルカン・フィネガンは「ビバリウム」の監督さんでもあります。
ジェシー・アイゼンバーグ、イモージェン・プーツが出演している「ビバリウム」も不気味で不条理で不思議な怖さが描かれている秀作ですので、本作ノセボが面白い、と思った方は「ビバリウム」もオススメです。
MrOwl

MrOwl