岩嵜修平

⻘いカフタンの仕立て屋の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
3.9
終盤は嗚咽の連続。なんと美しい愛の映画を…!マリヤム・トゥザニ監督、『モロッコ、彼女たちの朝』から更に人物描写の細かさ、丁寧さが増して、既に巨匠の貫禄。主要登場人物3人だけの小さな世界の静かな映画なのに、全く飽きない。美しく、モロッコの観光映画としても◎

同性愛が刑事犯罪とされるモロッコにおいて、自らを偽りながら生きざるを得ない人々。でも、夫婦の間に嘘はない。そこに確かに愛があったからこそのラストの展開…。カフタンという伝統衣装をモチーフとしたからこその、資本主義の論理に巻き込まれる伝統の悲哀まで描かれ、物語としての深みは増す。

前作に続いて主演のルブナ・アザバル(「灼熱の魂」など)の演技が今作でも凄まじく、夫からの愛情に疑念を抱きながらも、切実に愛情を与え、病を抱え、経済的にも生活が厳しい中でも必死に生きていく姿に涙。決して正しい人でないのも良い。最後の選択に至るまでの複雑な心情の揺れ動きの表現よ…!
岩嵜修平

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