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銀平町シネマブルースのTSのレビュー・感想・評価

銀平町シネマブルース(2022年製作の映画)
3.6
【ミニシアターでの群像劇】77点
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監督:城定秀夫
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:99分
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 地方の寂れたミニシアターで起こる群像劇です。見ていてほっこりし、『ニューシネマパラダイス』や最近していた『キネマの神様』あたりの作風が好きならばいけるのではと思います。結局、こういう作品を観る人って映画好きなんですよ。映画嫌いがこういう映画を観ることはあまりない。だから評価も自ずと上がるのではと思います。それ程特段素晴らしいというわけではないのですが、見ていて心が落ち着くといいますか、ああ映画愛に溢れているなと感じさせられます。

 生活に苦しんでいる近藤は、ホームレスの佐藤と絡んでいた。ある日、生活保護を受ける関連から銀平スカラ座の梶原と出会い、そこでバイトを始めていくのだが。。

 まず、主人公の近藤をはじめ、生活に苦しんでいる人が多いということがわかるのですが、そこにつけこんで生活保護をかざして悪行をこなす偽善者達が末恐ろしいです。いつの時代にも、人の弱みを握り悪行をこなす人はいるものです。この偽善者達がいうように、人には最低限の生活を営む権利があることを憲法は認めています。そんなことを綺麗に謳っているのに非道徳的な行いを何故平然と行えるのか。人間って本当に不思議な生き物だとつくづく思います。

 と、それはともあれ舞台はこじんまりとしたミニシアターです。昨今は大手シネコンでさえ苦しい中、ミニシアターが生き残っていくのは至難の業ともいえます。ましてや、今作の銀平スカラ座は借金まみれであり、雇っているバイトの人たちにも給料を払えていない始末。ただ、60年という歴史をもち備えているため、挽回劇を繰り広げようとします。実は主人公の近藤は昔に映画監督をやっており、一部のマニアの中ではカルト的な人気を誇っていた模様。そこに着目し、近藤監督復活を祝するイベントで起死回生をはかっていくのです。まあでも何かに着目し、イベント化するということは大事なことでしょう。企業は金が全て、すなわち集客をしないと生き残れない。ほっこりとした作風ではありますが、社会の厳しさも描いています。そして、今作を見ている多くの人は映画好きであり、こんなのを見たら応援しないわけがないじゃないですか。確かに俳優達の滑り具合や、演技の惜しさはやや気になるのですが、そこを抑えたとして、やはり作風が良い。『カサブランカ』を愛しすぎてずっと上映しているミニシアターなんて最高ではないですか。

 さすがに傑作とまではいきませんでしたが、ミニシアターの良さが滲み出ている、映画愛に溢れた作品だなと思いました。無責任な発言ではあるかもしれませんが、一つでも多くのミニシアターが今後も存続できることを祈りたいと思います。もちろん、大手シネコンも良いところはあるのですけどね。両者共存してほしいなと思います。
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