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イヴの総てのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

イヴの総て(1950年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

合わせ鏡に無名のフィービーが映るラストショット。これが本作の総てだろう。表では仮面を被って謙虚に愛想よく振舞っているが、裏では野心に燃え自分がのし上がるためには手段をも選ばない冷淡さを持っている。自分の目には自分しか映っておらず、演劇界の栄枯盛衰はこれからも繰り返されることを暗喩しているあのラストショットには、正直鳥肌が立った。

今回の題材は演劇ということで、「人生こそ舞台」というメタシアター的テーマを逆説として捉えるなら、女優としてイヴが経験したことは人生という舞台に生きている我々にも十分起こり得るから恐ろしい。自分だけを見つめた結果、大切な人たちを失い、他人の足を引っ張るだけの人間にはなりたくないものだ。

最近疲れからか映画を観る気になれず、しばらく自宅のスクリーンから離れていたのだが、久しぶりに観た映画が本作で本当に良かった。物語は機知に富んでいるし、そのうえ演出に見ごたえがある。毎日映画を観ていると気が付かないことにも、時間を空ければ気が付けることがあることに気が付いたことが本作から得た何よりの収穫かもしれない。
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