開明獣

シモーヌ フランスに最も愛された政治家の開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
自民党の松川ルイ、今井絵理子らが、フランス視察をしたことが、殆ど観光ではないかと、大炎上したのは、ついこの間のこと。何が問題なのか整理してみよう。

・ フランスはバカンスまっただ中。視察に行くには最も適さない季節

・ フランスは今、収まりつつあるとは言え、国中で暴動な起こり、不穏な状況。全く視察に行くのに相応しい時期ではない

・ 38人もの大人数で行く必要性はゼロ以下

・ 子供連れで行くなど言語道断。なんらかの理由で子供を預けられないのなら、他議員に託して行かない選択肢をとるべき

・ 一部自腹と後出しジャンケンの言い訳をしたが、全体の経費と自腹の割合を出さないから納得感ゼロ以下

・ 数字で想定される対費用効果を出さないから、批判を浴びる。全部数字に出来るものではない?ならば行かなくてよろしい

・ くだらない写真をSNSにアップする前に、何の目的で、誰にあって、将来どういう対応をするためにという、計画や実施出来たこと、視察で活かせたことをマイルストーンとしてどう実施していくのか定量的な目標をきちんと明快に出すべきだった

視察自体は、適切に行われれば悪いことではない。問題は税金という公金を使う意識が限りなく希薄で、政治力のない議員がいたということに尽きる。レベルが低くて呆れてしまう政治家がいるのは、私たちの責任なので、ぶーたれても、ブーメランになってしまうのだが、最低限選挙に行って、こんな議員が選ばれないようにしたいものだ。"税金"を養分代わりにチューチュー吸ってる、今回の視察議員、国会で自分のディナーショーの宣伝をした中条きよし、政治のせの字も知らず、統一教会と関係もった元おニャン子クラブの生稲晃子、などなど、我らの税金が無駄に使われるのは阻止したいものだ。

余談ながら、またしても、ホリエモンのようなやからが、「批判する奴はやっかみで、貧乏くさい」などと逆張り発言で、集客を図ってるが、もはや取り上げるのは三流スポーツ紙くらい。だが、こんな本質から的外れな意見を若い人が万一信じてしまったら、由々しきことだ。ガーシーと同じ穴の狢の、ホリエモンとかひろゆきとかは、火星か水星に移住して地球とは関わりを持ってほしくないものだ。

その、おバカ視察団が、訪れたフランスには実はすごい政治家がいた。それが本作の主人公、シモーヌ・ヴェイユ。裕福なユダヤ人家庭に生まれたが、ユダヤ人狩りにあい、アウシュビッツに送られたが、奇跡的に生き延びた。家族、友人、知人を多く亡くした彼女は、弁護士の資格をとり、最初は司法官として、不正義や不寛容とも戦っていく。

決して平坦ではない茨の道を、不屈の闘志で乗り越えていくさまは、感動以外の何ものでもない。ヴェイユは、後に孫たちを連れて、アウシュビッツを再訪する。彼女の心に去来するものを想うと涙を禁じ得ない。

いかなる政党にも属せず、女性初の欧州議会議長を務めた、偉大なる人物の伝記映画。前述の視察団は本作を100回観て心を改めて欲しい。この人を目指して欲しい。真の政治家とはなんたるものなのか、勉強して欲しい。

ちなみに、哲学がお好きな人なら、もう一人のシモーヌ・ヴェイユを思い浮かべるかもしれない。「重力の恩寵」という哲学史上に残る名著が、遺稿から編まれ、死後有名になったが、こちらのヴェイユは、ユダヤ人として英国に亡命している。その亡命先の英国で客死してしまったのは、人類の損失と言っても過言ではない。

世界に誇れる2人の偉大なるシモーヌ・ヴェイユを産んだフランス。哲学者は別として、果たして日本にそんな政治家がいるだろうか?観賞後に少し悲しくなったが、きっと未来には現れるに違いないことを信じよう!

今こそ、まさに万人が観るべき作品!!

https://news.yahoo.co.jp/articles/f422a1bb1971fe62b6d6b311a2c2b5df2457b919?page=1
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