椿本力三郎

ゴジラ-1.0の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.7
ゴジラ軸で見るか、ドラマ軸で見るか、
で評価が大きく分かれるであろう。

神木隆之介と浜辺美波、
さらに吉岡秀隆と佐々木蔵之介、安藤サクラといった実力者ぞろい。
彼らを中心とした「ドラマ」は、
戦後復興とコミュニティによる支えあい、
特攻隊員の抱えたトラウマの解消というテーマもエピソードも
極めてベタな展開で、何の面白みもサプライズもない。
特に神木隆之介と佐々木蔵之介の過剰でステレオタイプな演技も含めて
良く言えば安定しており、悪く言えば凡庸。
ただその安定感が本作では奏功し、
ゴジラの凶暴性がより際立つことになっている。
すなわち、ベタで地味な「ドラマ」は、「ゴジラ」を際立たせるために用意されたのだと考えると
本作の構成は見事だと思った。
純粋な怪獣映画としてゴジラを見ることに集中できる。
CGの迫力も素晴らしい。
伊福部昭作曲のゴジラのテーマは体の奥底に響いてくるね。
シアターの音響で受け取るべき。

それにしても浜辺美波の非日常感は、
京マチ子、原節子、若尾文子といった昭和の銀幕女優と同じテイストがある。
明治から昭和の女性を演じさせるとピカイチではないかと思う。