椿本力三郎

プラダを着た悪魔の椿本力三郎のレビュー・感想・評価

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
4.5
司馬遼太郎の小説に「義経」があるが
テーマは義経を通して見た「頼朝」の話であった。
あえて義経の目線を入れることで
すなわち真正面から「頼朝」を描いていないからこそ、
立体的に頼朝を受け取ることができた。
この点「判官びいき」という言葉もあるように
義経は悲劇のヒーローとして日本人の共感を呼ぶ存在であることもこの役割に適任であったのだろう。

さて「プラダを着た悪魔」もアシスタント役のアン・ハサウェイの魅力が爆発している作品であるが、
しかし、あくまでも編集長役のメリル・ストリープが主役であり、
彼女に振り回されるアン・ハサウェイのお話。
ストーリーは単純・ベタで、ファッションはキレキレ、ニューヨーク、パリの街並みも素敵、音楽もカッコいい。
だからこそ、アン・ハサウェイ、メリル・ストリープの素材の良さと演技力に集中することができる。
ストーリーの展開にもスピード感があり、飽きることは一切ない。
役柄的に、また作品のマーケティング的にも当時のアン・ハサウェイが共感を得られやすいということはあるだろう(いや、当時ではなく、永遠に、かもしれない)
しかし、本作がやはりメリル・ストリープの映画であることが思い知らされるのは、
終盤のクルマの中での2人のやり取りである。
セリフは多くはないが、たたずまいと目線で、
メリル・ストリープはアン・ハサウェイを圧倒する。

ポップな仕上がりではあるが、役者の凄みを感じさせる作品であった。