椿本力三郎

アンダーカレントの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.1
中盤以降に説明的なシーンと会話が続き、
このテンションでどうやって終わらせるつもりなのだろうと
心配になってきたが、
なるほど、この終わらせ方なら「あり」だなと感心。
それもこれも井浦新の感情を徹底的に抑制した演技力によるもの。
最後の最後までためてためて一気に爆発させる。
その爆発から日常に戻った、その落差と余韻の表現が素晴らしい。

真木よう子は、陽で、強い女性を演じることが多いが
本作では、そういう従来のイメージを前提としつつも、
人生に突然の理不尽な欠落が生じ、
自分も自分の周囲の人間にもどのように接して良いのか、
振舞って良いのかがわからずに及び腰になっている心理状態を非常に繊細に演技している。
このような突然来る人生のシフトチェンジに共感できる40歳前後の人間は多いのではないだろうか。

真木よう子にとっても監督の今泉力哉にとっても
新境地を切り開いた感のある作品だと思った。