椿本力三郎

夜明けのすべての椿本力三郎のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.9
当事者が公言していないだけでPMSやパニック障害、更年期障害(最近は女性だけでなく男性にもあるとされている)などの症状に苦しんでいる人は職場にもかなりの割合でいる。
これは当事者だけでなく、家族や職場の同僚といった、その人に関わる周囲の人間の理解と寛容さがないと乗り越えることはできない。

どこにでもいる平凡な職場のスタッフが、PMSで感情が突然コントロールできなくなる様子を上白石萌音が見事な演技力で表現する。彼女を見ていると「演技力」とは、観客にどれだけ深い共感と感情移入を引き出せるかではないかと思わされた。

PMSやメンタル不調については
現代でも徐々に認知はされていても
文化的な制約もあってか
まだまだ当事者が広言されることは憚られる状況であり、
その苦しみや葛藤はインビジブルであると言わざるを得ない。
彼らに対して光を当て、役者の演技力で社会的な共感を高めること、すなわち映画というメディアが果たすべき役割をきちんと果たしている作品と言える。

こういうことへの理解が深まり、具体的な対策がそれぞれの現場で行われるようになることこそが、本当の「女性活躍支援」であり、
まさに「今ここ」は「夜明け」前なのだろう。