椿本力三郎

9人の翻訳家 囚われたベストセラーの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

3.9
期待以上の本格派ミステリー。
目まぐるしい展開で
最後の最後まで気が抜けない。
道尾秀介が「ミステリーは人間を描くのに最適の表現手法」と言ったように
この作品も「人間の業」に迫っている。
文学への愛、創造へのリスペクト。
そこへ翻訳家という立ち位置からアプローチすることへの葛藤、アートと資本主義、言語だけでなく多様性に満ちたチームでプロジェクトに取り組むという時代性。
また、ストーリーの構成として
北野武の「ソナチネ」がゴダールの、
「JOKER」がスコセッシのオマージュであるように
この作品も某ミステリーの古典のオマージュ。
作品中にも明示されるが
しっかりとした本家、筋があるからこそ
遊びと時代の変化を持たせることが出来る。
古典や型の重要性。