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ゴジラ-1.0のマダムのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
今作品は敷島の苦悩と再生を丁寧に描いている。登場したときから引鉄を引くことが出来ず、復員して隣のおばさんの八つ当たりを甘んじて受け止め、典子を愛しても決して結婚しようとしない。敷島は重度の心的外傷後ストレス障害を負っている。敷島の時間は止まったまま、そこから動けないのだ。自らを責めながらただ生きているだけだ。

そんな敷島の時間が、典子を失ったときから皮肉にも少しずつ動き始める。ゴジラを倒すという「やるべきこと」を自覚したからだ。そしてそれはひとりでは成しえない。同じ思いを仲間たちと共有し、お互いを必要とする。橘に殴られながらも整備を依頼する。橘を信じているからだ。あのとき、あの島で、敷島の弱さを知った橘を信じている。橘はそれに答える。弱さは悪いことではない。死ぬことは誰だって怖いものだ。それが強いられた死であれば尚更だ。

PTSDを負った敷島の再生を真っ向から描いた、真っ正直な人間ドラマであった。
敷島は日本の別名でもある。敷島の再生と戦後日本の再生がリンクしているとも思った。

https://ameblo.jp/kin-za-za/entry-12829033408.html
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