しょう

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)のしょうのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

初期キャラである哀ちゃんがメインとなる本作品。
宮野志保=哀ちゃんがバレる展開、からの黒の組織が迫りくるヒリヒリ感、からの様々なキャラクターが入り乱れての応酬、からのコナン君の主人公然とした振る舞い。
疾走感がたまらない1作だった。

冒頭追われる一人の女性。そこに入るキールの「逃げるなら私の方に」の独白。からのジンの兄貴の登場。

と思ったら、ゆったりほのぼのした福引きシーン、この、いきなり緊張させ、そこから日常へ振る緩急はベタだが、一気に引き込まれること間違いない。

哀ちゃんが譲ったブローチの整理券。そのご褒美としての園子からの八丈島旅行。
いつもより鈴木財閥の力を使うのにちゃんとした理由があって嬉しいところ。

到着して不意に見つけた白鳥警部からの、乗船故意間違いからの、パシフィックブイ上陸。どこかの1室で待っててね とは言われないコナンくんの扱いにはツッコまず、そういうものとして放置するのがコナン映画を楽しむための見方と改めて確認。

さてここから一気に展開が動く。
バーボンとベルモットによって、直美さんが誘拐される。そして彼女のペンダントに隠されたメモリ、それを開くと「宮野志保=灰原哀」を示す証拠が。
この時ばかりは、「えっ、マジでどうやって収拾すんの?本編についに干渉?逆に知られたウォッカを作品から排除するパターン?」など、いろんな「?」が一気に頭を駆け巡った。

哀ちゃんに忍び寄る魔の手。いつもならここで夢オチだが、今回は現実。蘭ちゃんの奮戦はシンプルにカッコよく憧れすら覚えた。

しかし結局哀ちゃんは誘拐され、抱いていた困惑と絶望がさらに深まる。映画で同じ画角に入ることはあっても、直接は交わっていなかったウォッカと哀ちゃんが顔をガッツリ合わせるとは…。
奮闘した博士の涙にはこちらの涙腺もしっかり誘われ、感情的なコナンくんには目暮警部や佐藤刑事だけてなく、こちらも心がギュッと掴まれた。

ここで本映画で最も働いたと言っていいキールの活躍劇場。正直なぜ殺されないかが不思議なくらいだが、父・イーサン本堂とのシーンが挿入され、彼女の覚悟と生き様が染みる。
組織でまた「生きて」いけるよう、かつて様々な工夫を凝らし決死の思いでキールを組織に返した赤井さんとコナンくん。哀ちゃんを特に守りたいはずのこの2人にとって、過去の自分たちの決断が、その解決を手助けするキールという存在につながったと思うと、因果に思いを馳せずにはいられない。

その後の不意のベルモット姉さんのアシスト。
なぜそんなに手を差し伸べるのかとつい思ってしまう。かつて、コナンと交わした約束はあるだろう。ただどちらかというと、ここで幼児化(若返り)がバレると、自分やボスの秘密にとっても支障がある、といった事情があるのではないだろうか。

さて、話はパシフィックブイに戻る。
癖から明かされるピンガの正体。男の振りをしていることは冒頭のコナンくんのあからさまなフリから読めていたが、大胆ななりきりからの変装解除はやはり驚いてしまうところである。
(村瀬歩さん、1人で変装前後の声をどちらもやってたの、感嘆せざるを得ない。)

「コナン=新一」であることを掴み、コナンを手土産にと考えるのは、『追跡者』アイリッシュを彷彿とさせる。
ただ、死に方が人となりを表すなら、2人が違う存在であったことは、少しあとに明白に感じるだろう。

潜水艦をどう追い詰めるかに話を移そう。思わずニヤッとしてしまう、赤井さんと安室さんの共闘。何ならもう仲良いだろとツッコんでしまいそうになる。ライ呼びとバーボン呼びは粋なやり取りだった。

そしてクライマックス。劇場版で近年使いに使われまくっている花火ボールが今回も大活躍。この展開はまさに『悪夢』を振り払う『異次元』な展開。
そして、今度は『標的』はコナンくんそのままに、主体が蘭ちゃん⇛哀ちゃんに変わったマウストゥマウス。
浮上するときの哀ちゃんのモノローグがかわいすぎるし、コナンくんマジでカッコよすぎなのだが…!?
そして、元の主体に返すための哀ちゃん×蘭ちゃん。いや、さすがにドキドキしますって。
次回予告で出てきた「A」は今作のここに通じるオマージュでもあるんだろうなと回顧。

ここまで思うがままに書いた本作品の感想。
あと書けていないとしたら、ゲスト声優の沢村一樹さんがめちゃくちゃ良かったこと(キャスト発表されたときから、沢村さんはなぜか安心感がめっちゃあったがその直感は正しかった)、菅野さんアレンジのメインテーマ×おしゃれなオープニングは今年もめちゃ良かったこと、船長は絶対に何かあると思ったら完全にミスリードだったこと、おっちゃんの活躍があまりにもなくて残念だったこと(2年後くらいに期待!)など。

そういえば、コナンくんは涙は流さない(青山先生談)から、灰原が誘拐された直後に海から上がってきたシーンで頬を伝っていたのは、涙ではなく海水なのだが、あれもきっと『絶海』に消える蘭ちゃんと哀ちゃんと重ね合わせたオマージュなんだよなあ。
振り返ってみて、良い意味で嘆息してしまうシーンがこれまた多いことよ。

ミステリー要素はあまり多くないが、サスペンスとして随一の仕上がりだった。コナン映画でハラハラしたいと言われたらこれ!とオススメできる1作であった。
しょう

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