このレビューはネタバレを含みます
物語が紐解かれてく毎に作品の色が変わる素晴らしい作品。
個人の中に存在する得体の知れない怪物が
あらぬ行動を取らせる。
湊と依里の描写は血の気が引くほど、
綺麗な終わり方。
◾️湊は父親の不倫を発端に、
男性が嫌いだったんじゃないかということ
ある夜、母に迎えに来てもらった車中で父さんみたいになりたくないという発言、
そして、作文にはシングルマザーになりたいと書いていたこと、これは無意識に湊は心は女の子だったのではと思わせる。
仏壇の前で、なんで産んだの?という言葉の真意も、いっそ女の子に産んでくれればという気持ちから来たものかも。
そして、長く伸ばした髪。
男らしくないと言う保利先生の言葉も知らず知らずのうちに湊自身が男として律するための呪いになっていたのではないか。
愛した依里は男の子、でも自分が嫌いな男を、依里を愛する戸惑い。
葛藤が彼をチグハグにする。
でも、依里とあったことは隠したいから嘘をついて保利先生を矢面に立たせる、
純情な気持ちが周囲をここまで狂わせる。
そんな湊が本当に自由になれたのが校長とのトロンボーン、ホルンを吹くシーン。
あの瞬間の校長の表情が生き返ったように、目が輝いているように見えたのが印象的。
◾️校長の行動は冷徹な判断の結果(?)
孫が亡くなってしまったのは校長によるもの。なぜそうしたのか。
スーパーで子供に足を引っ掛けたのは?
→迷惑をかける子供には手を出して体で悪いことをしたのだと覚えさせる
保利先生が何もしてないとわかっていて謝罪をさせたのは?
→湊の気持ちを察した上で、
生徒に害を与えないため教師を犠牲にした
留置所での夫との会話では、
夫は一切、校長を責めていなかった。
そして孫の年齢は明かされず。
このことから子供を最優先に、教育者として接するが、人様に迷惑をかけてしまった場合、容赦なく行動に移せるほどの冷徹さを持ち合わせた人なのではないか。