ふぁるこんりえ

怪物のふぁるこんりえのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

是枝監督と坂本裕二さんが組まれたことをだいぶ前に公表されており、
気になっていた。

坂本裕二が好きな先輩が観に行く予定と聞き、
私もと思い、久しぶりに映画館へ足を運んだ。

年齢層は、50代以上の方が多かった様子。

鑑賞前に、
坂本裕二さん、怪物を描くきっかけのエピソード。
信号が青になっても前方のトラックが動かず、クラクション後にそのトラックが横断歩道を渡る車椅子を待っていたことがわかり、今も後悔している。
「自分が被害者だと思うことにはとても敏感だが、自分が加害者だと気付くことはとても難しい」
予告を拝見し、
保護者の勘違いなのかなぁ?と思った。

観た後の感情は、複雑な気持ちが残った。
フィクションの映画だが、
映画の中の問題は、実際世の中に起こってる深刻な問題。
感情の生き物は複雑だった。

母親は、突然起こる息子の異変に戸惑いがあったのかなぁ。
印象は、ただ息子を責めずに寄り添う。
でも、だからと言って息子本人と向き合うのではなく、
母親は、学校側の方と話し合いに力を入れていた。
校長室での、校長先生に3人の先生。
観ていて、なんかあるんだ。
でも、みんな感情に違和感を感じた。

担任の先生、普通の悪くもない先生だった。
でも、大人の知らないどこかで、
子どもたちだけが知っている残酷な世界。
自分が起こしてもいない事柄が、
どんどん大きくなって、そりゃ精神がおかしくなるなぁと思った。

わたしは、怪物誰だ?と2人であのバスの中で遊んでいる姿が、
本当に愛くるしくて、心の底から笑みが溢れてたんだよね。
あと、友情とは別の感情が生まれた時の戸惑った姿に、
なんだか涙が出てきた。
わたしも、先生のように誤解だけがどんどん広がり、
ごめんなぁ、ごめんなぁと気持ちになった。
私自身も、小中高と辛い時期があり、大きく何かあった後わけではないが、
周りを気にしすぎず、馴染めず、辛かった。
死にたいと何度も思った時期だった。
だから、あんな感情を持ちながら生きる事を考えると、
やっぱり私は子を持つことを考えるのが難しいと思った。
でも、あの時辛かったから、大人になってからあの辛さを超えることがないのかなぁと思ったりもする。
まだ守られている時、学校を休むから、生活できない訳ではないし、
父と母は生きる環境を変わらず作ってくれてた。
でも、これが大人になると、会社を休む、給料が少なくなり、生活出来なくなる、、、と、
自分自身も辛いのに生活も辛くなるのかなぁと考えたこともある。


この映画を見てて、一番純粋な気持ちを持った人が、
傷ついてた。
でも、その気持ちは誰しもが持っていた。
いつの間にかその稀有な気持ちは、ほんの一部になり、
あとは、邪悪な気持ちに染まっていく。
そうなると、事実でもないこと、どこかで聞いた噂話を、
人の弱みに漬け込むように言っていく。
あの映画の中で、誰もがそれをしていた。
多数の人が。

自分を偽ることしかできなかった。

バスの中が、2人にしかない世界が出来上がっていて、
絵や飾り、空間が全て綺麗だった。
2人のあのバスの中にいる世界を見るのがとっても居心地良かった。

こどものときでも、大人になっても、葛藤があり、
本人自身もどうしていいかわからず、周りもどうして良いものかわからない場合がある。

こんなに一人一人の人間の複雑な感情を、
映画で俯瞰しても、
どうして良いかわからなかった。
ただ、自分も普段、相手を勝手に疑ったりしてしまうことが多いから、
気をつけたいと思った。
私も人と生きていく中で、人と生きていくのは苦手だけど、
出来るだけ傷つけたくないと思うし、やっぱり自分も傷つくのは辛い。

劇中に、坂本龍一さんの音楽と自然の音との融合があったり、
最後流れてた音楽は、aquaは配信で聴いてとても好きな曲だったので、
それもとても良かった。

諏訪湖が舞台で、映像や自然が美しく映っており、
それもとても好きだった。