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怪物のikoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
11歳という子どもから脱していく時期の少年たち。その2人にフォーカスされた第3幕(と言っていいのかわからないけど)は、銀河鉄道の夜の、最後の日のイメージがうかんできた。そのくらい美しかった。この世のものとおもえないくらいに。

世の中にはたくさん怪物が存在する。切取り方でそれはもうそこらじゅうにいる。子どもの無邪気さだって怪物じみてるとも言えるし、組織が、そこを支配する空気が、笑っていいことを示すメディアが怪物だ。

そういう流れで、あの2人の遊び「怪物だーれだ」はなかなかに重くのしかかる。あの遊びのように、お前は誰なのかと問う。

物語の構成として、「私」がみているのはごく一部に過ぎないことが迫られ、見せ方はよくできてると思う。が全体としては一貫性に欠ける。

坂元裕二の脚本は相変わらず登場人物に丁寧に語らせる。でも、その方向性と、演出が合ってたのかと疑問が残る。

たとえば最初、瑛太演じるホリ先生の、たとえ保護者目線から見た疑わしい人物だとして、それにしてもあんな感じだろうか?
また3幕にて、校長先生がいろんな意味で「ひと段落」して、「おんなじだ」と吐露し、トロンボーンのシーンになるシーン。たしかに、校長先生はあそこで初めて子どもと対峙しているから、あのような関わりがあったとて不思議ではないが演出として唐突感がある。台詞やそのシーン自体は素晴らしいけれど。

観る側に違和感を感じさせたかったのかもしれないけど、脚本と演出の間に齟齬がある感じがして一貫性に欠けている印象を持った。

だから、脚本賞なのかなと。

それにしても、子役2人の演技が凄まじい。坂本龍一の音がまた美しさを際立たせていた。
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