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オッペンハイマーのikoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
オッペンハイマーの全てはあの握手に現れている、と思う。どういう関係であれ求められることに弱いのだ。女関係も同じ。
必要だと言われ応じて原爆を作るに至った。

この映画はひたすらオッペンハイマーの「弱さ」を描いている。何度となく妻に戦いなさい!と言われる。

量子論、理論物理学を操れるものすごい頭脳の持ち主だから技術的にはやれてしまう。だからひと足先に気がつくこともあり、その態度が周りにはわかりにくい。何を考えてるかわからない。でも、大筋では求められたら応えようとしてしまう。そして時代が変わるとちがう意味で時の人になる。

クリストファー・ノーランはそういったオッペンハイマーの単純で複雑な人間性と、当時の政治や緊張を同時に描いてみせた。また粒子のようなノイズをずっと浴びせられることでもはやなんの感情なのかわからないほど揺さぶられ、途中から涙が止まらなかった。細かな粒子が波動で身体の中に染み込んで押し出されるみたいに出る水分。量子論ってそういうことなんじゃないのか、とわかんないなりに思ったりした。

キリアン・マーフィー、すばらしかった。マット・デイモンも良かった。レミ・マレックの役も良かった。

このあたりの歴史とか知らない方じゃないと思うけど、もう一度復習してからまた観たい。
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