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市子のikoのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
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あんまり前情報なしに見たらスリラーで戦慄した。

やっと得た幸せな暮らしから逃亡する市子。その生活はほんと穏やかで、かけがえのないものだったろうが、戸籍の前になす術がない。それは市子のせいではないし、愚かな大人たちの結果で、本当にしんどい。

友達とケーキ屋さんをやりたい。その開き直った(当然持っていい)無邪気な欲求と、それまでのことのコントラスト。それを知ってる北くん。つのる北くんの欲望。市子のあっけらかんとした感じ、目が離せない危うさへの視点が北くんだった。その辺りの杉咲花の演技は凄みを感じる。

最後は本当にゾッとした。けど、北くんは本当にああ言う形でヒーローになりたかったか?
なんとかして生きる方向を向いたんじゃないのか(それが幸せになるかどうかは別として)と思うが、長谷川くんとの愛を知った後ではそんなもの要らなかったんだろうと思える。
脚本というか人物描写に矛盾を感じたりもした。けど矛盾を抱えるのが人間だよな。

専門職としては、制度でなんとかなることはもっとたくさんあったのに、と言いたい。
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