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怪物のmakoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.4
《怪物 だーれだ》
◎84点→88点
スコア変更

監督: 是枝裕和。『万引き家族』
脚本: 坂元裕二。『花束みたいな恋をした』
音楽: 坂本龍一。『ラストエンペラー』

第76回 カンヌ国際映画祭
🏅脚本賞
🏅クィア・パルム賞

6/3、9の2回鑑賞。
1回観たあとにもう一度観たくなり、翌週に友達と観に行った。
なかなか深い物語だった。

予告編でも流れていた、「怪物だーれだ」だが、怪物探しをする内容ではない。
では、怪物とは何を指すのか。

本作は3人の視点で描かれているが、それぞれの視点から見ると同じ出来事でも全く違う印象だった。
所謂(いわゆる)『羅生門』(黒澤明監督作品)的構成。

1. 湊の母・早織(安藤サクラ)の視点。
2. 湊の担任・保利(永山瑛太)の視点。
3. 湊(黒川想矢)の視点。

本作の少し前に観た『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』に共通するものを感じました。
それは言葉の暴力(加害性)とコミュニケーションの難しさ。
更に本作では、噂や憶測で人を判断していた。
実際私もやりがちなので鑑賞後は自省しました。

是枝監督と坂元脚本、それぞれの持ち味が活かされていたと思います。
是枝監督は子役の演出が上手い。本作では湊役の黒川想矢君、依里役の柊木陽太君、それぞれ素晴らしい演技でした。
いつもなら子役に事前に脚本を渡さずその場で台詞を教えて撮影してるそうですが、本作は坂元脚本なので事前に脚本を渡したそうですが、いつもと変わらない自然な演技で流石だなと思いました。
坂元脚本は、シリアスな内容の中にもユーモアを兼ね備えていて、本作でも真剣に話をしている最中なのにクスッと笑えるシーンがあった。重めな中に少し軽さもあって観やすかった。
是枝脚本だと単調になりがちなので、このタッグは相性がいいなと思いました。(偉そうですみません)

俳優陣は子役含めて皆良かったです。是枝組、坂元組の俳優陣、素晴らしかった✨

ここから、1,2,3の視点で思った事を書こうと思います。ネタバレを含んでいるため情報を入れたくない方はこの先は読まないでください⚠️⚠️⚠️






1…私は早織と同じく子を持つ母なので、この視点は共感する事が多かった。早織が、学校や担任の対応に呆れたり怒ったりしてたが、私も同じ気持ちだった。
保利先生は最悪だなと思ったし、校長に何を言っても糠に釘みたいな反応には早織と同じ思いでした。
そして子供が言った事を鵜呑みにし、疑う事なく信じてしまう気持ちは理解できました。でも私は鵜呑みにはしないかな😅
早織と湊の関係は良さそうに見えたけど、早織は湊とちゃんとコミュニケーションが取れてないように感じました。
だから湊は母に本当の事が言えず、嘘を重ねていたんだと思います。

2…1で最低だと思った保利先生ですが、保利先生視点だと180度印象が違って驚いた。
生徒思いの良い先生だった。
早織にもきちんと説明したかったけど他の教師から止められ説明する機会を失っていた。
ある意味、保利も被害者ということが分かった。
湊の嘘の証言、ガールズバーに行ってないのに行ったと噂を流されたり、騙されて連れて行かれた所は保護者会での謝罪だったり。
特に学校内の圧力は怖かった。
いい先生だったけど一つ残念だったのは、“男らしさ”を無意識に言っていた事。
これにより、依里は保利を拒否してしまった。
保利に相談できていたらここまで大きな問題にならなかったかもしれないのに。
保利の彼女(高畑充希)は、自分の保身の事しか考えていない人だったけどリアルにいそうでした笑
彼女の台詞で「女の“また今度ね”と、男の“大丈夫だよ”、は信用しちゃいけない」というのは共感したし、彼女はその言葉を言って去ったから、伏線回収されてた。

3…1,2で分からなかった事が湊の視点で全貌が分かった。
いろいろと切なかった。
依里の父親の事、湊の行動、母が聞き取れなかった湊の言葉、湊と依里の楽しい思い出、校長先生とのやり取りなど。

本作の怪物は、誰しもが持っているものだった。嘘、噂、憶測、偏見、虐待、事なかれ主義、圧力、暴言など。コミュニケーションの難しさを改めて感じた。
一番の怪物は依里の父親だと思う。

ラストはグッときた。
解釈は人それぞれだと思います。
願わくばあのシーンそのままならいいなと思ったけど…。しがらみから解放されたと、解釈しました。





6/3
観客 20人くらい
劇場鑑賞数 #67
2023 #73

6/9
観客 12人
劇場鑑賞数 #70
2023 #76
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