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怪物のSSDDのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
◼︎概要
郊外で夫を亡くしシングルマザーで一人息子を育てる母親は次第に言動がおかしくなる我が子を不安に思う。
ある日を境に母、子供、教師それぞれの視点で描かれ、起きた事件の真相がわかっていく。

◼︎感想(ネタバレなし)
湖のある郊外の街で美しい情景の中描かれるそれぞれ抱える思いに、苦しくなる作品。

子供を思う親、社会的立場、偏見的思想、定義された幸せなど、様々な視点での息苦しさを感じる現代社会を描く。

明るく美しい自然溢れる情景の中、恐怖すら感じる進行に没入感が強く、どうなっていくのか顛末を知りたくなる作品でした。







◼︎感想(ネタバレあり)
・母から見た怪物
様子のおかしくなった息子の口から出た、担任による体罰。全てが敵に見え、感情を殺し事実を伝える先生達を怪物と見なし攻撃してしまう…本当の怪物は子供を憂うあまりに子供の話しか一方的に聞かず、幼い同級生から聞く言葉から都合のいい捉え方をした自身。

・担任から見た怪物
事実がどうであるかを知りたがらず、学校のために犠牲となれという職員達。子供を思って指導しているのに攻撃してくる親。
何もしていないのに告発し、一丸となって攻撃する生徒達。全てが怪物だっただろう。

・依里から見た怪物
いじめをしてくる同級生、同性愛者であることに気づき、自分を病気ということにしたがる父親。苦痛から逃れるために何も感じないようにされるがままにする。

・湊から見た怪物
依里という知識が豊かで一緒にいたいと思っていた友人を好意を持つことで、同性愛者であることは"豚の脳を移植された人間"という言葉が自身にも降りかかる。

そして母親から期待される"普通の家族"、先生から放たれる"男らしくしろ"という言葉が、自分は普通ではない異常な怪物なのだと思い悩み始めてしまう。

純粋に一緒にいたいと思う気持ちはそんなにも問題なのか、生まれ変わることで境遇を変えたいと追い込まれてしまう。

・最後
土砂崩れから生還し、二人で叫び走るシーンはどれとも判断がつかない。

A:二人は生還し、最後のシーンは現実
B:二人はバスで死亡、二人はずっと共にいられる妄想を描いていた
C:虐待によって依里は死亡。湊はバスに自身だけ乗り込み、依里といる妄想をしながら死亡

Cが最も残酷だしそう捉えたくないが、虐待を受け、一晩風呂に浸けられていた状態の小さな子供が台風の中、走り回れるものだろうか…そう考えると胸が詰まる。

校長は身投げしてしまったのだろうか、放火は父を殺そうとしたのだろうかなど様々余地が残る作品でした。

連休の最後の夜に観るのは少し重すぎたかもしれません。ただ、感情が揺さぶられる素晴らしい作品でした。
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