RiN

その夜の侍のRiNのネタバレレビュー・内容・結末

その夜の侍(2012年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

3年ぶり2度目の視聴です。1度目の視聴では、とにかく画面の暗さと堺雅人・山田孝之両名の演技にただただ感嘆するばかりだったのですが(それでもその年のベストに選びました)、2度目ということで、脚本の素晴らしさが際立ちました。
冒頭に挟み込んだ亡妻の留守電メッセージのシーンで主人公の依存性の高い性格を印象付け、さらにそれを劇中繰り返すことで悲しみと憎しみの深さを表現しています。もちろんそれはラストシーンに狂気の体現と払拭として回収される鮮やかな伏線にもなっていて、唸らされるばかり。
一方悪役サイドでは、まるで鼠をいたぶって遊ぶ猫のような純粋な残虐として「飽きた」というセリフが何度も登場します。また、ほぼ後半のシーンになりますが、「優しさ」を本能的に避けるかのように警備員の部屋を去るシーンがとても印象的。彼の、どこまでも本能的である性質をうまく表現しているようです。
さらには、この純粋な悪になぜか従ってしまう人々の動機付けにもなっている「寂寥」の心理描写が見事。「ぼくにはなにもなくて」「いいですね、部屋に誰かいるって」のセリフのように、みんな、空っぽな自分を埋めたくて、彼の、ある意味突き抜けた「黒」に惹かれているのでしょうか。
そういえば途中に登場するデリヘル嬢も、「暇なの」と言っていました。
暇って怖えな。
RiN

RiN