RiN

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューのRiNのレビュー・感想・評価

4.1
『学校に通う理由』

そこそこ恵まれていたのか、学校を嫌いだと思った記憶はあまりない。そんなこともちらちらあるにはあったのだろうけど、今に至る傷になっている、なんて大それた思い出はひとつもないので、まあ平均点以上の学生生活だったんだと思う。

モリーとエイミーにとって、あの夜まで学校は(常に自分が優位の)競争だった。誰よりいい成績をとって、誰よりいい大学に行く。高校まではその通過点で、一緒に走る同級生たちは抜き去るべき障害物くらいのものだ。
幸いにも、なのか、惜しむべきことに、なのか未だにはっきりしないけれどわたしにはそんな風にシリアスに成績に向き合った記憶もまたないので、想像に過ぎないけれど、その優越感はそれはもう筆舌しがたい快感だったのじゃないだろうか。出発点はきっと、ヒエラルキー上部からの見下されたような感覚なんだろうし、普段は見下してくる連中を卒業式で抜き去る達成感や、成績という担保でわかりやすく証明された知性は、少なくとも学生のうちは「正義」だし。
しかし、人間ってそんな簡単に価値付けられるほど単純でもない。それに気付くタイミングは人によりけりだけど、ふたりの場合は皮肉にも進路だったわけです。学生生活でもイケてた連中の進路もイケてたっていうね。もうね、はらわた煮えくり返るだろうね。この気持ちはわかる。人間、というより生物に生まれた以上他より優れてるというのは生命維持の優位に直結する。イコール、その感覚は快感に直結する。それを突然奪われる。不憫。
じゃあ高校卒業までの一晩で遊べるだけ遊ぶ!ってのはもう建前でしょう。ホントはずっと、あのキラキラに混じって遊んでみたかったのね。ヒエラルキー上部ってムカつく以上にカッコよく見えてしまいがちなのだ。悲しいかな憧憬。

学生時代ってなんのためにあるんだろうって考えたとき、あとにも先にもあんなに色んなやつにいっぺんに会う機会って学校だけだったなってのが一番デカい気がする。それぞれがそれぞれの事情を抱えながら、同じ場所に集まって、同じことをする。
ひとりひとりのそれぞれの事情も、大人ほど上手くは隠せないし、子どもほど察せないわけでもない。だから知ることができる。世界にはいろんなしんどいとイケてるがあるってことに。上下も左右もめちゃくちゃな、カオスだってことに。

エイミーやモリーの行く先の大学には、賢い人たちしかいない。どんな手を使ったのかには種類あれど、たっかい学費を払える(見込みのある)やつらしかいない。そういう世界はきっとふたりには楽しいし楽だけど、人間関係の学びはあんまりなさそうだ。
言葉が通じないバカに見えるあの人にも、いろんな事情や悲しみややるせなさがあるって肌感覚で知ってることは強い。二人が望む「正しい」道のためにも、あるいは一番必要な強さだ。

めちゃくちゃ笑って100点のエンディングを見終えたあとに、そんなことを考えながら帰った。昔からの友だちに会いたくなった。
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