Punisher田中

みなに幸あれのPunisher田中のレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.0
看護学生の私は、帰省シーズンだからかはわからないが田舎に住む祖父母に会いに行こうとしていた。
今でも気味の悪い雰囲気の漂う謎の多い祖父母の家。
久しぶりの再会でお互いの幸せを確かめながら幸せな時間を過ごす。
しかし、幸せでは上書きしきれない薄気味悪さを祖父母の家に感じてしまう私は、物置となっているらしいある部屋を開けることを決意する...

""幸せ""って...?
不快と狂気が充満する田舎を舞台に""幸せ""を巡る怪奇譚。
まずつづりたいのは、ホラーとして身構えない方が良いことだ。
これだけは遵守しないとハッキリ言って楽しめないと思う、僕がそうだったので。
今作はあくまでホラーだが、ホラーではない。(ハ?)
まずは笑いと恐怖がごちゃ混ぜになった奇怪な演出の数々が個人的にはノイズになっていた気がする。
作品のぶっ飛び具合も良く言えば丁度良いし、悪く言えば中途半端でやるんだったらとことん滅茶苦茶に掻き回してくれやと思ったのは内緒。
タイトルから察せられるように幸せの定義、形、幸せとはそもそもといった、実態が無ければそもそも存在するかもわからない概念に大しての意味を追求していく。
答えの出ない事柄に対して深く考える事が好きな方にはかなりオススメ。

明らかに世界へ向けた挑戦的な幸せについての描き方で、この世界のシステムは誰かが割りを食わなければ何かが成功しないし、何かを楽しめない。
自分の幸せでさえも必ず自分の知らない所で誰かが割りを食っている。
本当に皆幸せになれるのか?そもそも幸せ?という幸せの形、幸せの在り方を再考させられる世界のシステムへの疑問を提示する作品で、そういった観点を村の習わしとして組み込むことで風刺化出来ていた。
ある種の成長譚であるし、理不尽な事象を通しての心境の変化含めて現代の幸せの見方が変わる面白さを持っていることは確か。
映像で語るメッセージをセリフとしてダイレクトに伝えるストロングスタイルがサムく、画の不快さが勝る気持ちの悪い怪作だった。僕には合わなかったが、響く人は多いはず。