してぃぼ

みなに幸あれのしてぃぼのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.3
祖父母の住む田舎の村に帰ったら家に人の形をした「何か」が飼われていた。それは、あらゆる不幸を家族の代わりに背負い込んでくれる存在で、その村では周知の事実である。孫はそんな風習に真っ向から反発するが──

「人は誰かの犠牲の上で幸せが成り立っている」というのがテーマ。A24的なジメっとした不気味さとシュールな笑いもある。祖父母がたぶん素人なので逆に演技に味が出ている。

理想主義者の孫が徐々に現実主義者になっていく展開なんだけど、あまり捻りがなくノれなかった。というか伝えたいメッセージと、設定がややずれているような。家族は確かに不幸は回避できていたが、特に幸せそうには見えなかった。「何か」に一方的に不幸を押し付けるのって状況としてはいいのかもしれないけど、精神的にそれ当事者は幸せなのかなって思う。「何か」に業を背負わせているのを目の届く範囲で自覚している状況って言うほどいいのか?そもそも誰かの犠牲の上に成り立つ幸せって無自覚なことが多いから。

でも内容が重ためなのに変に軽いアンバランス感が不気味でそこはよかった。

山奥に住む家出した叔母さんが「アフリカの人たちのこと、幸せじゃないと思ったことある?ちょっとでも思ってるということは、あなたが人と比べてしまっているのよ。それは幸せではないよ(意訳)」みたいなセリフがあったが、ありきたりだなと思ってしまった。

シャマランやヨルゴス・ランティモスに影響を受けているとインタビューで拝見したが、おばあちゃんの謎の妊娠とか謎めいたカットはそういう影響?考察しがいがありそう。あと「何か」のダンスに家族が音を奏でて楽しんでいるのは少し笑えました。

祖父母が「何か」の立てた物音を誤魔化すために豚の真似をしてフガフガ言ってたシーンが1番面白かったです。
してぃぼ

してぃぼ