してぃぼ

夜明けのすべてのしてぃぼのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.6
恋愛と生死を絡めず小説、マンガ、映画などのエンタメを作るのってかなり難しいと思っているんですが、本作はどれも色濃く描かない。唯一山添君の同僚でもあった彼女との別れをそれとなく描いていたけど、特に作中では触れていない。藤沢さんのお母さんも命に関わるような病気ではない。

登場人物は全員他人の気持ちが分かる人たちで世の中のみんながみんなこういう人だったらいいなと思うし、その為には自分もそんな世界を作れる一員でいられるよう日々努めていかないと思わされる。世の中こんな人ばっかりではないよ。フィクションなんだよ。というんじゃなくて自分たちがそういう世の中にしていくんだと。

本作は作品の舞台も結構珍しい。ここまで会社という小さな社会を描いた作品もなかなかないなと思った。もちろん山添くんも藤沢さんも苦労しているけど、周りの人たちの協力や支えが個人的にはグッとくる。それも社長が弟を過去に亡くしているからこそ、絶対にもう2度と起こさないという気持ちが社員全員に骨の髄まで染み渡ってるんだなと思うと。

あと思うのはやっぱ三宅監督の作品って描写が繊細かつ丁寧でめちゃくちゃ好き。インタビュー形式で会社や社員たちの本当の気持ちが引き出されていくのもかなり自然。プラネタリウムを通じて仕事のやりがいや、他者への尊敬、同僚との仲間意識などの描き方も良かった。ただ印象的な絵もなく、舞台はほぼ変わらずで、ストーリーも濃淡はあまりないので少し退屈に思う人がいるかも。
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