ヒノモト

シック・オブ・マイセルフのヒノモトのネタバレレビュー・内容・結末

シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自己愛に溢れていて、アーティストである彼への嫉妬から、自身に注目を浴びるために違法薬物に手を出し、可哀想な自分を演出しようとした結果の顛末を描く作品。

行き着く先がいい意味でクレイジーな展開になっていて、コミカルとシニカルを同居させてるシナリオの面白さと、ボディホラー的な終盤の狂気と自己愛の果てにある本音が垣間見えて、現代的で美しい作品でした。

この先はネタバレを含む感想となります。

主人公自身の自己愛だけでこの内容が成立する訳でなく、彼との競争関係、憧れと嫉妬が行動や言動によく現れていて、自分を注目させるためについた小さな嘘が、現実の身体変化を越えていく立場の逆転が起こる後半や終盤の残酷なまでの痛々しさが、映像表現として的確に強くインパクトを与えていることと、アートやファッションにおける虚構の価値観の浮き沈みや、消費する立場と搾取する側の入れ替わりを上手く対比させていて、物語として大変良かったです。

原因不明の病であることを装うために違法薬物を飲み続けるという異常行動を成立させるための理由付け(キャラ付け)がしっかりされていて、フィクションでありながら嘘くさくなく見えて納得できるところが、物語自体の面白さにつながっていました。

海外でよくある病気で苦しんでいる人たちが輪になって、体験を語り合うようなシーンが前半と終盤でそれぞれあるのですが、前半での主人公シグネの空っぽ具合を露呈するのに対し、終盤では体を返していること自らの身体に課した病気の重みを体感する言葉の実感する重みに変えていることも見事でした。
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