とみやま

君たちはどう生きるかのとみやまのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「君たちはどう生きるか」改め、「お前ら勝手に生きれば?」みたいな映画で心底驚いた。「説教ムードのお話なのかな?」とか思って見ると、説教どころか終始放置されているような感覚がする。エンドロールが始まるタイミングもバランスがおかし過ぎてつい笑ってしまった。好き放題作るけど、作りたくない後日談はカット!エンドロール!!みたいな。

物語の整合性は取ろうとしていないし、論理的な理解の映画じゃないのは確か。だけども、アニメの整合性と想像力の厚みで、物語を成立させていて、「宮崎駿的な何か」をフルパワーで浴びせられるところがよかった。冒頭の空襲のシーンから何から何までキレッキレ。重心が大きく変わるところや水の抵抗、筋力で物を動かすモーションなど、すっごく細かくて気持ちが良かった。狂気的なシーンが山ほど詰まっていたり。鳥の気持ち悪さと怖さをあそこまで描いてくるなんて。宮崎駿監督が80代にして制作されたことを考えると、年齢はただの数字に過ぎないと思える。もちろん、ずば抜けた狂気あってこそだけど。映画監督やめるとか言わないで、好き放題作ってほしいな。長編アニメにこだわらずに。1時間でも30分でも10分でも。2〜3年後に「そろそろなんか作るか」ってなりそうなら、そうしてほしい。

地上の下の地獄で母親と出会い、父親はその世界から隔絶されているところとか、白いやつが生命として地上に上がる世界で冒険するのが印象的だった。だから、映画を見終わった時は、エディプスコンプレックスと母胎回帰を通して現実に生まれ直す話だったのかな?と思った。

一番ギョッとするのが、ナツコさんが真人に対して「お前なんか嫌いだ!出ていけ!」と迫るシーン。前振りがあまりにもないから「え、そうきた!?」と驚くし、画も、ここだけ、おどろおどろしい目つきで描かれているから怖さすらある。
ギョッとするけど、視界が一気に開かれた気がしてよかった。真人の視点で物語を追うのに精一杯だったところで、ナツコは「子どもがまだ生まれていない、つわりでキツいタイミングで、姉の子どもが家にやってきて急に母親の立場で接していかないといけない。しかも全然懐かない。でも泣き言言ってられない」という状況だったじゃないか、とハッとさせられる。

見たのが公開初日で、何の情報も出てないなか見に行った。よかったのは、客席の反応もビビッドに感じられたところ。事件の渦中に紛れ込んでいるような感覚がして、なんだかスリリングな体験にも思えた。で、その客席は全体的に困惑ムードで、近くの観客がエンドロール終わった瞬間「わけわかんねえ」とボソッと口にしたのが良かった。
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