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君たちはどう生きるかのYMのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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ものすごいエネルギーというか、パワーの洪水みたいな時間で、2時間ずっと揉みくちゃになって、気づいたら映画館の出口に吐き出されて 鯨に飲まれた時とかこんな感じかもしらん

宮﨑駿が過去を背負いながらもしがらみと別れどう生きるか、生きたか、作ったか、そして彼の背中を見ている人に「で?君たちはどう生きんの?」なんだろう。あまりにも様々が満ち溢れていて鮮やかで、なんか「おめでとう」って言いたくなっちゃったんだけど、でも、どうしてか猛烈に悲しくて、すごく落ち込んでいるような気持ちになっている。
生物はもちろん、それ以外、存在する万物は産まれた瞬間から変化し老いて滅びるものだから、変わらぬまま立ち尽くしたり、座り続けて、そこにい続けることはできないんだって、進んだら戻れないんだって、それを誰かや何かに望むことも叶わないんだってことをまざまざと見せつけられて、いい大人なのにどうしようもなくそれが寂しかったんだと思う。

自分はどう生きたか、この取り返しのつかない愚かな一生をどう死んでいくか、そういうことばかりを考えて生きているなかで、
生があって死があり、死があって生がある。出会えば別れもある。それは苦しさと惨さだけでなく、喜びでもあるのだと、肩を掴まれて滔々と語りかけられた。
どうしたって、どんな世界だって、生きている限りは生きるしかないのか……それがもう、自分には重くて重くて。
ぐらぐらで今にも倒れそうな世界でも、いや、もしかしてもう崩れてしまった世界でも、それでも、何度でも立たないとならない。
命を産むという意味でバトンを渡すことはない一生だったけど、せめて少しでも美しく優しい世界を次の人たちに残せるように大人をやっていけたらいい。

心臓をバクバクさせながらじっとスクリーンを観ていたあの時間、感じたこと、ぜんぶわたしだけのもの。誰かに分けられない、すごく大切な時間だった。それが良かった。終わらないでくれと思ったくらい好きな景色と世界だった。でも終わらない物語はやっぱり無かった。
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