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君たちはどう生きるかの8637のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

色々な意味で現代に挑戦状を叩きつけてきた。驚天動地の世界観が次々に展開されるのは良いのだが、数多と別れる集大成だからか分からないが、それぞれに見切りをつけるのが早すぎて、ドライ過ぎる作風という印象だった。老齢なりに昨今流行りのメタい事をやりたかった気もするが、それが実現するには少し遅かった。宮﨑駿はこれで現役を終えて満足なのか、が些か伺えない。
これだけ情報を事前に隠していると、この物語の意図についてどこを問い合わせようとしても分からない、というのもこの宣伝方法の功罪だったと思う。

ネットを遮断してまで情報を入れずに挑んだ本作は、私達に想像の幅を広げさせ、僕の期待までもを遥かに持って行ってしまった。
しかし、逆に言うと僕は何を想像して映画館に足を運んだんだろう。過剰な期待をしていたがあくまでもそこには"ジブリ"が広がっている。それが至極正解だったんだと思う。

だからこそ、観た上で、"映画"と"宣伝"が結局は共依存的に相対していることが分かった。近年の観客は僕含め、宣伝との答え合わせをするように観る習性があって身勝手に期待を寄せていたが、「宣伝がない」という一種の客寄せ形態に至ってもその状態への期待が生まれてしまうんだな。高校の授業の一環でそういう研究をしていたものでそれが気になり出してきた。

鑑賞を終え、情報を全て開け放した上で振り返っていく。声優にしても現代のオールスターと言えるメンツが揃っていて驚いた。外からの様々な力が集結すると、ジブリタッチの手描き画でもここまで表現できるのか。

余りにも非児童向けのタイトルがジブリ然としたロゴで映される冒頭で、一応の理解はいくんだよ。でもどんどんと、それを超越していく。
ダシとしてしか使っていないような戦後の舞台背景、ジブリ歴が浅いことを悔やむばかりの過去作品モチーフ、ドゥニ・ヴィルヌーヴばりに飛躍するSF描写と詩的なオーパーツ。
これが日本と共にあった"あの"ジブリというスタジオの非正常性であるとともに、廃れかけてるスタジオジブリの遺産として皆に気にかけられる形で公開されたことに意味があったんじゃないかなと思う。

2018年夏、宮崎駿が映画にするという噂を聞いて買った吉野源三郎氏の長編小説。時を経てすっかり売ってしまったが、今となってはあれがこの映画に何を与えていたのかが気になるばかりである。正直映画内にあの本が登場した瞬間は「宮﨑駿やったな、よく洋画でやる"薄い繋がりしかないやつ"じゃん」と思ってしまったのもあって余計。図書館で借りようかな。


追記 : 現時点でまだ何の宣伝もないのに、エンドロールに「予告編制作」のスタッフがいたの面白かったな。いずれ解禁されるだろう予告楽しみ。
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