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君たちはどう生きるかのariy0shiのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8
だいたい「君たちはどう生きるか」という大そうな命題なのだから、作中で具体的なディテールをくどくど説明するのも野暮だ。

当たり前だが、どう生きるかは他人から指図されるようなものでもなく、自分で考えるしかない。方々に隠喩を散りばめた抽象的なストーリーになるのも必然と言えば必然で、観るものに「宿題」が出された感じがした。

命の終焉、つまり死は誰にでも訪れるものだが、少なくとも現世では、実際の死を経験した上でその様相を表現することはできない。主人公の眞人らが迷い込んだあの異世界は、ファンタジーとしての死後の世界に見えたが、大事なのは、死の世界が生へとつながっていることだ。

「終わりは次の始まりである」ということは、同じ生と死の関係性でも「始まれば終わりがある」という場合のどん詰まり感とは違う、前向きなメッセージとなって届く。

我々が生きる世界は何かと問題も多いが、まんざらでもない世界にすることはできる。そうした希望を次の世代に託すから、しっかり受け止め考えなさい ── これが上記「宿題」の言わんとしていることではないか。

また劇中に出てくる積み木(石)は、微妙なバランスの上に成り立っている人生や世界のはかなさとも読み取れるし、またその並べ方は自分次第という人生の選択を表しているようでもあった。

死は経験から語ることができない。しかし他者の死は、残された生に対して大きく作用する。こうして生と死、終焉と再生を考え、そこから何を読み解くか?というのが、この映画の狙いなのだと思う。
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