ariy0shi

aftersun/アフターサンのariy0shiのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.0
子供と大人の境界線。
自分と他人の境界線。
思春期とは、こうした「線」を跨いでいこうとする時期だ。

「子供は優しくない」と言えばやや語弊があるが、自分のみならず他者の痛みをわかってこそ優しさならば、原理的に子供に優しさを求めるのは難しい。優しくなるために、ひとは他者と関わり、大人になるようなものかもしれない。

11歳の娘ソフィ(フランキー・コリオ)が、人知れず苦悩を抱える31歳の父カラム(ポール・メスカル)を十分に理解することは、やはり難しかった。とはいえ彼女は、彼女なりの曇りのない目で、父親を見ていたと思う。

ちょっとした親子喧嘩の後、父は、娘は、この親子はどうなるかと心配になったものの、翌朝仲直りをする。
おそらく父に投げつけた酷い言葉に後悔しつつ、娘は自分の秘密(男の子とキスをした)を父に打ち明ける。
父は自分の行いを謝り、「これから先も、なんでもいいから話していいんだ」と娘を受け止めようとする。

父と娘のどこかぎこちない対話がリアルだが、未熟な娘、そして同じく未熟な父は、お互いに歩み寄ろうとしていた。ほんのりとした優しさが滲み出ていたシーンだった。

子と同じように、親も変化していく。
その変わりようを「成長」と呼ぶなら、親も子も、成長のためには他者の「支え」が必要だということも同じなのである。

あの夏休みの後、カラムの身に何が起きたかは語られない。
だが、ソフィと過ごしたあの時間が、彼にとっていかに大切だったかは伝わってくる。それが、あのラストシーンに見出すことができた救いだった。
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