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君たちはどう生きるかのぴろのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.2
【映像作品の説明過多に対するアンチテーゼか】

新書『映画を早送りで観る人たち』によると、近年の映像作品は何でもセリフで説明してしまう傾向があるという。『鬼滅の刃』もそうだが、登場人物が自分の気持ちや状況などを全てセリフで説明する。比喩や情景描写、会話の"間"などでは、登場人物たちの心の機微を理解できない人が増えているかららしい。結果、作品はどんどん分かりやすさが追求され、難しい表現は嫌厭され、映画は「鑑賞する作品」から「消費するコンテンツ」へと成り下がっていっている。

『君たちはどう生きるか』には、こうした状況に対する宮崎駿のアンチテーゼが込められているように思うのは、私の考えすぎだろうか。突拍子のない展開や寓意的な表現は、鑑賞者にとって決して「親切」ではない。しかし、それゆえ観る者はそれらを理解しようと必死に頭を働かせる。「これはどういう意味なんだ?後にどう繋がってくるんだ?」と。結局ほとんど謎は回収されないし、正直、鑑賞直後は「なんだこの意味の分からん映画は」と思った。少し頭も痛くなった。だがそれもまた、自分の持てる感性をフル活用して「作品を鑑賞した」ことによる、筋肉痛のようなものなのかもしれないと今は思う。
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